第6回では、毎年恒例となっている「ランドセル贈呈式」と「ファミリーデー」のオンライン開催を
どのような思いで実現し、どのような反響があったのか。に加え、
社内版ソーシャルネットワーク導入の経緯と効果について、それぞれの担当者に話してもらいました。
新型コロナウイルス感染症の影響で、毎年2月に開催してきた小学校へ入学する社員の子どもにランドセルを贈る「ランドセル贈呈式」が中止となるだけでなく、原則リモートワークに切り替わるなど、社員同士が直接交流する機会が減っています。その環境下で、毎年夏に開催している社員の家族を職場へ招待する「ファミリーデー」を初のオンラインで開催したソニーピープルソリューションズ コミュニティデザイン室の野村雅子さんと紺谷静枝さんに当時の経緯や工夫した点、苦労した点など話を聞きました。
野村:「ランドセル贈呈式」中止が決定された2020年2月初めに遡ります。60年以上続けてきた「ランドセル贈呈式」はコロナ禍の影響で止むを得ず中止となりましたが、8月に予定していたファミリーデーで代替イベントを開催することをその時点では決めていました。
しかし、コロナは収まらず4月から原則リモートワークとなりました。この時点で、ファミリーデーとランドセル贈呈式のリアルでの代替イベントの開催は難しいだろうと思いましたが、できる方法を必死で考えていたときに思い出したのが、 “creative failure(創造的失敗)を恐れるな”というソニースピリットでした。
この頃、社内では、Microsoft Teamsなどリモートへの移行が進んでいました。このソニースピリットが背中を押してくれ、リアルがだめならリモートで開催しようと決めました。
開催を決めたものの、リアルで開催してきたファミリーデーをリモートで開催するイメージがなかなか出来上がらなかった中、「どうすれば参加者である社員に喜んでもらえるか」ではなく、「社員のために何をするべきか」という考え方に行きついたとき、明確なイメージが持てました。コロナ禍で、職場の仲間に会えない、ささいな会話すらもできない状況におかれている社員のもやもやした気持ちを、少しでも緩和したい。そして、こういう時だからこそリモート配信でソニーグループをいろいろな角度で社員と家族に知ってもらい、楽しく学んでもらいつつ、社員同士また社員の家族につながってもらいたい。「やめる」ではなくて、「やらねばならぬ」という精神で、オンライン開催へ向けた一歩を踏み出しました。
野村:いかにその時々でまわりの人たちを「巻き込んでいくか」ということですね。人と人とのつながり、人脈は財産だと痛感しました。毎年、開催するごとに人脈が広がり、深まり、その結果、それぞれのコンテンツ提供者が自分ごととして対応し、融合して、良いものが生まれていると感じています。
紺谷:場所や時間に特定されず、いつでもどこでも参加できることで、本社圏だけでなく、北海道から沖縄まで全国から参加できることです。規模としては、Webアクセス回数19,382回、グループ会社66社の社員とその家族が参加しました。これまでは「本社だけ大規模なイベントを開催していていいな」と残念がられる声が届いたり、会場のキャパシティのために参加人数を制限しなくてはならなかったり、猛暑の中で会社まで家族が来場する必要があるなどの課題がありましたが、これらが解消できたと思っています。その上、リアルでの開催ではわずか半日の限られた時間の中でコンテンツを詰め込んでいましたが、リモート開催では10日間と期間を延ばし、いつでもコンテンツを見てもらえる環境だったため、参加者に時間的な制約が少なく楽しんでもらえるようになったのは大きな変化でした。
紺谷:ライブイベントの配信中、チャットで「家族で観てます!」「めちゃ、レア情報~」「ソニーグループで良かった(泣)」等々の書き込みをいただき、我々スタッフは苦労が報われた思いでした。中でも恐竜研究家“恐竜くん”のライブ配信では、事前に用意していた塗り絵の写真を送られたお子さまがいたので、急遽でしたがそれを紹介し、とても喜んでもらえました。ライブ配信終了後、恐竜くんのサインを入れて自宅に郵送したところ、感謝のメールが届き、スタッフ一同で喜びました。また、ソニーコンピュータサイエンス研究所(ソニーCSL)によるAIセミナーにも社員、家族における学生から大人まで幅広い年齢層の多くの視聴者が集まり、AIに対する関心と学びの意欲を感じました。「ファミリーデーのコンテンツとして期間限定にしていることがもったいないです。AIの導入として非常に良く、社員向けで似たようなことをやっても良い内容です。」などのコメントもいただき好評でした。
紺谷:開催後の社員アンケートでも、「コロナ禍で軒並みイベントが中止される中で開催してくれてありがとう」「こんなにいろいろなコンテンツを用意してくれてスタッフのみなさんに感謝します」等々の声をたくさんいただき胸が熱くなりました。
野村:トップマネジメントからもフィードバックがあり、メンバー一同、大変嬉しく励みになりました。
コミュニティデザイン室では、60年以上続く伝統のランドセル贈呈式をはじめとして、ファミリーデーやスポーツフェスティバル等、社員のみならず、社員の家族も参加するイベントを企画・運営しています。こうしたイベントから、創業者の想いを伝え、ソニーグループの幅広いビジネスや取り組みを知る・体験してもらうことでのOne Sony、社員と社員、社員と家族、家族と家族がつながるWe are Sonyを実現していきたいと考えています。
今年は、なんとかファミリーデーをリモートで開催できたことで、結果、時間や距離の制約を超えて全国各地から参加してもらうことができました。そういった広がり感がある一方で、ソニーグループがもたらす「感動」には、会社で開催することのリアルの実感も同じように大切だと思っており、実際、そういった声も認識しています。そのハイブリッドの最適バランスは今後模索していく必要があると感じています。
ファミリーデーやランドセル贈呈式といったリモートイベントだけでなく、社内SNSを使ったエンゲージメント施策がはじまりました。ソニーグループ内での幅広い「人とのつながり」を形成するきっかけ作りを目的とした「Public Profile」がローンチ。その狙いをソニーグループ人事1部 堀田 綾子さんに聞きました。
社員が、人事システムに入力しているプロフィール情報を社員同士で公開し合うことで、連携を広げたり、深めたりするための、社内版ソーシャルネットワークの機能です。国内外のグループ会社に広げていき、グループ横断的に社員がつながれるようなプラットフォームにしたいと考えています。
人事では以前より、グローバルでの人事情報に関する共通プラットフォームの導入を決めていました。その際、ソーシャルメディアでつながることが一般的になる中で、ソニーグループ内でも、社内電話帳以上に便利に、そして仕事を進めるに際して人的情報に今よりもリアルタイムでアクセスできるツールはないかと考えたことがきっかけです。
ツール導入実現に向けた検証を始めた後に新型コロナウイルス感染症が広がり、原則リモート勤務となる中で、リアルな場で社員同士がコミュニケーションをとる機会が減ってしまいました。これまでなら、社内での伝手を頼って繋がることができていた社員とカジュアルに繋がれなくなるなど、働き方にも影響が出ました。このように、組織内で”Know-Who”機能も備えた新たな社内コミュニケーションが必要になり、ウィズ・コロナ、アフター・コロナにおける新たな社内コミュニケーションツールとして今回の導入に至りました。
「Public Profile」導入によって大きく分けて4つの効果を期待しています。1点目は、知の共有が進むこと。同じような専門領域、興味のある領域、趣味などをもつ社員同士がつながることで、自身の更なる成長や可能性を広げるきっかけを持つことができると思っています。2点目は、スキルの底上げです。プロフィールに公開することにより、自らのスキル向上により意欲をもって取り組むことに繋がるのではと期待しています。3点目は、全社視点で人的リソースを有効活用できることです。共通プラットフォーム上で人的リソースを見える化することで、自分の所属部署だけでは解決できないビジネス課題の解決に必要な人材にリーチすることができるようになります。4点目は、相手を事前に知ることができる点です。ビジネスで協業する場面でも、相手のことを事前に知ることで、円滑にコミュニケーションを進められます。社員が積極的にこの機能を活用することで、コロナ禍にあっても、これまでよりも密なのつながりを実現し、ビジネスを進めるうえでのメリットを多くの社員が享受できると思っています。