テクノロジーの力で未来の感動を共に創ろう。理工系分野を学ぶ女子学生を支援する「SONY STEAM GIRLS EXPERIENCE」始動
ソニーグループ株式会社(以下、ソニー)は、理工系分野を学ぶ女子学生を支援するプログラム「SONY STEAM GIRLS EXPERIENCE」を2024年4月に創設しました。
同プログラムにおける取り組みの一つとして、理工系分野を専攻する女子大学生を対象に、意欲的な学びの支援を目的として奨学金を給付。加えて奨学生には、ソニーグループの女性エンジニアと交流する機会を提供するほか、奨学生とソニー社員が、女子中高生に対して理工系分野の面白さや、働く楽しさを伝える「STEAM GIRLSバトンプログラム」も実施します。
今回の記事では2024年9月17日に行われた「SONY STEAM GIRLS EXPERIENCE」授与セレモニーと、同日に行われた「STEAM GIRLSバトンプログラム」キックオフミーティングの様子をレポート。女性エンジニアとして交流会に参加したチェンさん、そして事務局からは杉上さんと続麻(つづお)さんに、同プログラム創設の背景や、ソニーがめざす理工系人材育成の未来について語ってもらいました。
- Chen Xueyi(チェン シュエイ)
プログラムについては「SONY STEAM GIRLS EXPERIENCE」のページをご覧ください。
夢と好奇心を抱いて集まった、10名の奨学生。
はじめに、2024年9月17日に行われた「SONY STEAM GIRLS EXPERIENCE」授与セレモニーの様子を写真とともにご紹介します。
「SONY STEAM GIRLS EXPERIENCE」の企画発起人でもある井藤 安博(ソニーグループ 人事・総務担当 執行役員)から、オープニング挨拶と本プログラムの趣旨をあらためて説明。
続いてソニーグループ会長 CEO吉田 憲一郎から、奨学生のみなさんへのお祝いメッセージ。
ソニーグループの事業と人の「多様性」が基盤であり強みであること、またこの「多様性」はより良い未来を創造するために欠かせない要素であると述べ、次世代の学びを支援する「SONY STEAM GIRLS EXPERIENCE」を通じて、奨学生の皆さんの成長を願っているというメッセージを送りました。
続いて、奨学生のみなさんの自己紹介。応募動機や大学生活でチャレンジしたい夢や好奇心について話していただきました。10名の奨学生のうち、当日参加できなかった2名を除いた8名がソニーグループの本社ビル(ソニーシティ)に集まりました。
インタラクティブセッションの様子。井藤さんの他、ソニーグループ技術戦略担当役員の松本さん、そしてソニーを代表する技術者「Corporate Distinguished Engineer※」の一人でもある菅さんが、「進路を決めたきっかけは?」「学生時代にやっておいたほうが良いことは?」等、奨学生から寄せられた質問に答えました。
※変化の兆しを捉え、ソニーの持続的な成長のために、技術戦略の策定及び推進と人材の成長支援を行う技術者のこと。
詳細は「Corporate Distinguished Engineer」のページ、
Discover Sony過去記事は「既存の枠組みを超え、ソニーの技術戦略を担うCorporate Distinguished Engineer」のページをご覧ください。
最後に、吉田さんと一緒に写真撮影をして第一部の授与セレモニーが終了。休憩を挟んで、第二部の「STEAM GIRLSバトンプログラム」キックオフミーティングに移りました。
ここからは、当日の様子を杉上さん、続麻さん、チェンさんにお伺いします。
ゆくゆくはこの活動が、サークルのような存在になってほしい。
── 奨学生の授与セレモニーの後、「STEAM GIRLSバトンプログラム」のキックオフミーティングも行われたということですが、まずこちらのプログラムについても簡単に教えてください。
杉上:「STEAM GIRLSバトンプログラム」は、奨学生とソニーが女子中高生に向けて、理工系分野を学ぶことの面白さや働く楽しさを、さまざまな感動体験を通じて伝えていく活動です。女子中高生の理工系分野への関心を高め、進路やキャリア選択における固定観念や、ハードルを取り除くことを目指しています。
── 女子中高生に向けた取り組みを、奨学生とソニーが一緒に作り上げるということがポイントですね。
杉上:はい、あくまでも奨学生のみなさんに主体的に動いていただきたい活動ではありますが、いきなり学生のみなさんだけで何か考えてやってもらうというのは、どうしてもハードルが高い。彼女たちは1期生で、前例も何も無いところからのスタートですから。まずはソニーが持っているものを活用してもらいながら、一緒に活動を作っていければと思っています。
そして、今年度の奨学生は10名ですが、今後年を重ねるごとに奨学生全体の人数は増えていく想定です。来年には彼女たちにも後輩ができて、次の年はまたその後輩ができて、バトンのように次の世代に想いを受け継いでいきながら、この活動がゆくゆくは大学のサークルのような存在になればいいなと考えています。
彼女たちに見えている、理工系学問の可能性。
── 中高生に向けた取り組みについて奨学生とソニー社員が話し合う、その第一回目の場がこの日だったわけですね。どのように議論を進めていったのでしょうか。
チェン:奨学生8名とソニーの女性エンジニア14名が、ワークショップ形式で意見交換を行いました。ただ、この活動の主役は奨学生なので、ソニー社員は基本的には聞き役に徹して、議論が停滞した場合など必要に応じて視点を増やすアドバイスを行う役割です。
中高生に向けた取り組みとして、社内では2つのプログラムを考えていました。親子でソニーの職場に訪問してもらう「ソニー親子訪問会」と、オンラインで開催する「オンライントークセッション」です。大枠は決まっていましたが、それ以外は何も決まっていません。それぞれ何をするか、ということを奨学生のみなさんに考えてもらいます。
ワークショップでは、まず「女子中高生に伝えたい想い」を各自考えて書き出してもらいました。それをグループ内で共有して、そこからゴールイメージをすり合わせ、具体的な内容について考えていくという流れで進行しました。
── 実際に奨学生のみなさんとディスカッションをして企画検討していく中で、印象に残っている発言や議論はありましたか?
チェン:ディスカッションの中で「理工系の学問は、生活の中のあらゆることに繋がっている」という意見がありました。たとえば彼女たちにとって身近なものとして挙げられた例として、アニメの映像制作やコンサートの音響技術、イラスト制作のためのツールなどがありましたが、確かにそこには理工系の技術やノウハウが詰まっています。彼女たちにしかない視点で、それぞれ理工系学問の魅力を感じているのだと思いました。
また「進路は自由だ」という意見を出してくれた奨学生がいたのですが、これにはハッとさせられました。進路選択が自由であることは言うまでもありませんが、実態として、私自身の職場でもエンジニアの多くが男性です。進路選択が本当に自由であるならば、なぜこうした結果が生まれてしまうのか。女性が「進路は自由だ」と認識したうえで理工系分野に進まないのであれば、そこにはどのような理由が存在するのか。
もちろんソニーとして現状に課題意識を持っているからこそ、こうした活動を行っているわけですが、「進路は自由だ」というメッセージを大学生の立場から、中高生たちに伝えていくことには意味があるのではないかと感じました。
「リケジョ」という言葉がなくなる未来を創りたい。
── 具体的な取り組みの検討はこれからだと思いますが、あらためて「STEAM GIRLSバトンプログラム」を通じて実現したい世界について、みなさんの考えを教えてください。
杉上:「STEAM GIRLSバトンプログラム」について言えば、まず「たのしい」と感じてもらうことが重要だと思っています。先ほど「この活動がゆくゆくは大学のサークルのような存在になればいい」とお話ししましたが、サークルはまさにたのしいから続けられる活動です。活動に対する意義や想いは強く持っていてもらいたいですが、それだけだと続かない。他大学の奨学生や女性エンジニアと一緒に活動できるからおもしろい。ソニーと関われるからおもしろい。この活動に関わることがおもしろいと感じられるものにしていきたいですね。
チェン:ワークショップで意見交換する中で聞いた話ですが、奨学生のみなさんのまわりでは「理工系の勉強は難しいからやめておこう」という理由から進路を決めてしまう友人も少なくないそうです。これは非常にもったいないことですが、もしかすると、そもそも理工系に進んだ女性の先輩が少ないから、そこに飛び込もうという自信が持ちづらいのかもしれません。こうした偏見を払拭するためにも、「進路は自由だ」というメッセージを伝えて、勇気を与えることが必要だと感じました。
続麻:「リケジョ」という言葉がなくなればいいと思っています。女性が理工系の進路に進むことがまったく珍しいことではない世界が、一つの理想なのではないかと考えています。
奨学生も中高生も、そして社員も、共に繋がる活動に。
── 「STEAM GIRLSバトンプログラム」について、今後のスケジュールを教えてください。
続麻:12月から1月にかけて、奨学生に企画してもらった「ソニー親子訪問会」と「オンライントークセッション」を実施します。イベント実施後は、取り組みについて発表してもらい、今年度の活動全体を振り返ります。来年の4月にはまた新しい奨学生がメンバーに加わり、次年度の活動へとまた繋がっていきます。
── 「SONY STEAM GIRLS EXPERIENCE」としても「STEAM GIRLSバトンプログラム」としても、2024年度の奨学生が1期生となるわけですが、彼女たちにはどんなことを期待しますか?
続麻:奨学生はみなさん大学生なので、私たち社会人と中高生のちょうど間の年齢です。大学生という時期は、社会に出る前に一番変化して成長する時だと思っています。みんなで話し合い議論をまとめて、企画を形にしていくことも、最初は難しいかもしれませんが、経験を積むことでどんどん成長していくはず。そんな彼女たちの成長をそばで見守っていくことが、事務局担当としてたのしみです。
チェン:中高生向けイベントの中身も当然たのしみにしていますが、奨学生として、大学1年生の彼女たちがこうした活動に関わること自体に意味があると思っています。進路やキャリア選択における固定観念や社会に存在するさまざまなハードルについて考え、実際にアクションを起こすことは貴重な経験です。目の前の課題に向き合い、自分たちに何ができるのか考えて行動するためのきっかけになればと思っています。
杉上:奨学生への期待についてはお二人が話してくれたので、私はまた違った角度から話すと、この活動を通してより大きな繋がりが生まれるといいなと考えています。ソニーと奨学生と中高生とが繋がって、奨学生をサポートするために集まったソニーの女性エンジニア同士が繋がって、女性エンジニアのコミュニティが奨学生の支援を通じてより活性化していく。そういった流れが次々に生まれる、その起点となれたらうれしいですね。
<編集部のDiscover>
日本の理工系人材不足、またその中に占める女性割合の低さは社会課題となっている…という話題は、今まで何度も耳にしてきたはずですが、その背景についてあまり深く考えたことがなかったことに今回のインタビューで気づかされました。
職場に女性が少ない。理工系の学部学科に進んだ女性の先輩が少ない。まわりを見ても、理工系の進路選択をする女性の友人が少ない。そうした状況においては、本当の意味で「進路は自由だ」とはまだ言えないのかもしれません。それでも理工系の道を選んだソニーの女性エンジニアと奨学生たちがバトンを繋いでいくことで、女子中高生が何のバイアスも持たず、自由に進路選択ができる未来へと少しずつ近づいていくことを願っています。