SONY

自分のキャリアは自分で築く。「上級Iグレード」の社員に聞く、理想のキャリアの描き方。

Culture

<ジョブグレード制度について>
ソニーグループ(以下、ソニー)では、年次によらず、現在の役割(ジョブ)に応じて等級が定義されるジョブグレード制度を2015年度から導入しています。「インディビジュアル コントリビューター等級群(I等級群)」と「マネジメント等級群(M等級群)」に分かれた複線型の構成で、社員一人ひとりのキャリアの選択肢を広げることを目指した制度です。
I等級群は1から9まで設けられています。組織を統括するマネジメント等級と同程度の役割レベルを有するI6~I9のインディビジュアル コントリビューターは上級Iグレード社員と呼ばれ、高度な専門性を用いて会社や組織へ大きな貢献を果たすことが求められます。
※ソニーのキャリア/ジョブグレード制度について詳しくはこちら

今回は、ソニーの中でも特に高いレベルの技術力が認められた、上級Iグレード社員の一人である大場さんに、エンジニアとしてのキャリアの描き方を伺いました。
※記事に掲載している情報は取材当時のものです。

大場 契沖

~大場さんの主なキャリア~
2003年 入社/経営企画部門 経営管理担当
2005年 機構設計担当
2009年 機構設計加飾・材料開発担当
2015年 Sony Outstanding Engineer Award受賞
2016年 カメラ材料開発部門 統括課長(M等級)
2020年 カメラ材料開発部門 上級Iグレード(I等級)
2021年 XR技術開発部門 統括課長(M等級)
2023年 XR技術開発部門 上級Iグレード(I等級)

イメージとはかけ離れたキャリアのスタート。

── 事務系の職種からエンジニア、マネジメントから再びエンジニアへと、ユニークなキャリアを歩まれているように思いますが、もともと大学時代にはどのようなことを学んでいたのでしょうか?

大学は建築学科で、デザイン企画について学んでいました。建築も含めてものづくり全般に興味がありましたが、モバイル製品の商品企画のような仕事が面白いのではないかと考えソニーに入社しました。

── 大学で学んでいたのは経営学でも機械工学でもないのですね。当時はどのようなキャリアをイメージしていたのですか?

正直、入社当時は先々のキャリアはあまり明確になっていませんでしたが、先進的なデバイスを作って世の中の人をあっと言わせ、皆に感動を与えたいと漠然と考えていました。私の入社時はコース別採用が未導入だったので、「企画の仕事がやりたい」と言ったら、経営企画部門に配属されました。
当時はまだインターネットの黎明期で、私の部署では、ネットワークビジネスを立ち上げるための収益モデルを検討するような業務を担っていました。このときの経験がのちのち役に立つのですが、そのときは、自分がイメージしていた企画の仕事ではなく、ものづくりにも携われないため、希望と全然違うな…と感じていました。

自ら手を挙げ、念願だったものづくりの現場へ。

── その後、やはりものづくりに携わりたいと思い異動されたのですね。

はい、社内募集制度を利用して異動しました。社内のイントラに求人が出ていて、新しい挑戦をしたいという個人の意志により希望の求人に応募できます。受け入れ先の部署から合格が出れば、現部署の上司の許可なく異動できる制度です。

── 機構設計というと、大学や大学院で機械工学を学んできた人たちが大多数を占めているイメージがありますが、建築学科出身の大場さんも異動できるものなのでしょうか?

そこがソニーの大胆さであり、すごいところだと思います。私が異動したのはデジタルスチルカメラ サイバーショットⓇの機構設計を担当する部署でしたが、機構設計に関して何の経験も知識もない私を受け入れてくれました。合格の連絡を受け取ったときは自分でもびっくりしましたね。

── 機構設計に関しては全くの未経験になるわけですが、実際にものづくりの仕事にエンジニアとして携わってみてどうでしたか?

社内募集に応募した際も「機械設計の経験がないのであれば大変だよ」と言われていましたが、実際に異動してみたら本当に大変でした。右も左もわからず、毎日周りの人に質問していました。ただ、情熱を持って取り組んでいると、周りの皆も熱心に教えてくれるんですよ。毎日が勉強でしたが、私も興味のあることだったので苦ではなかったです。格好つけずに何でも「教えてください!」と、周りの先輩たちに聞いて回っていました。

経営企画の経験を、ものづくりに生かす。

── 2009年には加飾・材料開発を担当されていたそうですが、これも大場さんが希望して異動されたのでしょうか?

はい。加飾というのは製品の塗装など表面仕上げのことですが、大学でデザインを学んでいたこともあって、デザイン性を向上させる技術開発の必要性を言い続けていたところ、開発担当に任命してもらいました。ただ、それまで担当していた機構設計は物理学の知識が求められますが、加飾に関しては化学の知識も必要になります。異動してからもまた、毎日が勉強でした。

── 新しいキャリアを自ら切り開かれて、2015年にはエンジニアとしてSony Outstanding Engineer Award※を受賞されていますね!

ソニー独自の硬質アルマイトという表面処理技術開発などの実績が認められ、受賞に至りました。私が担当していたカメラ製品にはアルミニウムが多く使われ、アルマイト処理(アルミニウム表面に陽極酸化皮膜を作る処理のこと)がされていますが、傷がつくとどうしても安っぽく見えてしまっていました。そこで、傷つきにくい処理が安価にできるようにならないかと考え取り組んでいました。

※Sony Outstanding Engineer Awardとは
この賞は、エンジニアの新たな挑戦を加速させるために設立した、ソニーグループにおけるエンジニア個人に与えられる最も価値の高い賞です。
制度についてはこちら(2022年度の受賞者紹介ページに遷移します)

── 開発業務を進める上で心がけていることは何でしょうか?

開発業務を進める上で今でも役に立っていることは、入社当初「希望と全然違う」と感じていた経営企画の経験でした。開発は、事業としては先行投資ですから、利益が見込めないのに「開発したい」とは言えません。ROI(Return On Investment)なども考慮した、経営的な視点が開発には欠かせないのです。今振り返ると、経営企画について学んだ入社後の2年間が、開発業務を担うエンジニアとしての現在のキャリアにもつながっていると思います。

マネジメントを経て、再びエンジニアへ。

── 2016年からマネジメントを経験されていますが、ものづくりへの強い思いを持っていた大場さんとしては、葛藤はなかったのでしょうか?

エンジニアとして技術で人を喜ばせたいという思いはありましたが、マネジメントになっても「絶対に現場に関わる」という強い思いもまた持っていたので、特に葛藤や抵抗はなかったです。むしろ自分のチームを持つことで、自分とは異なる視点・思考を知り、明確な正解がない開発という業務に、メンバーの意見をどう生かしていくのかという新たな視点を養うことができるなど、マネジメントの立場だからこそ得られるものはたくさんありました。

── その後、2023年から上級Iグレードとして再び現場に戻られていますね。

2021年から、XR技術に関わる新しいプロダクト開発を担当する部署に異動し、材料の開発だけでなく品質やカスタマーサービス、アクセシビリティなど、守備範囲が大きく広がりました。新しいプロダクトをつくるためには、さまざまな人の助けを借りて新しい仕組みを走りながらつくる人間が必要です。私はそうした業務に専念することにし、マネジメントには新しいメンバーを迎えて任せることになりました。

ここでのキャリアチェンジの理由は、現場で働きたいという個人的なキャリア観というよりも、自分にしかできないことで組織に貢献したいと思ったからです。他部署や他社と協働して新しい価値を生み出すことが、上級Iグレードとしての使命だと私は考えています。

情熱を持って本気でぶつかれば、キャリアは無限に広がっていく。

── あらためて、エンジニアにとってソニーで働くことの魅力とはなんでしょうか?

ソニーは社員をとても大切にしてくれる会社だと思います。また、テクノロジーを強みとして掲げる会社として、エンジニアに対するリスペクトがあり、優秀なエンジニアがたくさんいます。そして、誰もがその高い技術や知識を出し惜しみせず、聞けば必ず教えてくれます。やりたいことを何度も言い続けることで、本気だということが伝わりさえすれば、年次や経験は関係なく、本気で向き合ってくれる会社です。

── ソニーには「自分のキャリアは自分で築く」という考え方が根付いていますが、やりたいことを言い続けるということが重要なんですね。

はい、言い続けることも大事ですが、実際にアクションを起こせるということもソニーの魅力の一つだと思います。たとえば私は2012年からメカ戦略コミッティ(事業横断の「技術戦略コミッティ」の横串活動の一つ)に所属しており、素材ワーキンググループのリーダーを務めています。ここでは所属組織の業務とは別に、ソニーグループ全体にとって将来必要になることに取り組んでいるのですが、そこには予算がついて先行開発までできます。
私は10年前くらいから環境対応素材の開発に取り組んでいますが、環境対応は時間のかかることで、すぐには事業に直結しません。それでも、必要な技術なので開発に取り組める環境があるのです。

── この先、大場さんはどのようなことにチャレンジしてみたいですか?

まず自身のキャリアとしては、上級Iグレードとしてソニーという会社に所属しながらも、ソニーの中だけにとどまらない、幅広いキャリアを築きたいと思っています。それは先程も述べたように、外に目を向けて他者とつながり、新しい価値を創造していくことが使命であると考えているからです。

具体的に取り組みたいテーマは、先ほどのメカ戦略コミッティで取り組んでいる環境技術開発です。まだ環境というテーマの重要性がそこまで認知されていなかった時代から、ソニーは他社に先駆けて環境問題に取り組んできましたが、まだ進化の余地は大いにあると考えています。だからこそ、この分野でより先進的な技術を開発することで注目を集めたいですね。
特に環境の分野では、エンジニアだけではなくさまざまな部署や多くの関係者を巻き込み、広く関係性を構築しなければ、技術開発は進みません。そういった場面にこそ、私のような上級Iグレード社員の存在意義があるのだと思っています。

<編集部のDiscover>
今回のインタビューでは当初「マネジメントと上級Iグレードという複線型のキャリア」としてジョブグレード制度の紹介を通して、ソニーにおけるキャリアの自由度をお伝えするつもりでした。ところが実際にお話を聞いて、驚き感銘を受けたのは、複線型の制度の存在だけでなく、大場さんご自身が入社の段階からこだわりと強い意志を持って、自らのキャリアを切り開いてきたことです。まさに「自分のキャリアは自分で築く」というソニーのキャリアに対する考え方を体現されている方だと感じました。


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