「実は、社会人になるのが少し不安なんです。」そんな私に、お世話になったソニー社員から返ってきた答えとは。
私(この記事の書き手)は現在大学4年生で、この春から社会人になりますが、その日が近づいてくるにつれて、言葉では言い表しづらい不安が押し寄せてきます。仕事をうまくやっていけるだろうか。職場にうまくなじめるだろうか。キャリアをどのように築いていけばよいのだろうか。私と同じように不安を感じている学生も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、社歴の異なるソニー社員3人にこの不安を聞いていただきました。この記事を読み終わった後、皆さんの心にかかる霧が少しでも晴れていますように。
※記事に掲載している情報は取材当時のものです。
- 加藤 巧
- 森下 航
- 谷口 初音
- 鷲尾 美波
誰でも一度は通る道。
── まずは入社当初を思い出していただいて、どのような気持ちで働いていたか教えてください。
森下:私は入社当初、それまでの学生生活からのギャップに戸惑いを感じた記憶があります。一日の仕事量が膨大に感じられ、求められるレベルに全然達していないと思いとても焦りました。
谷口:そうだったのですね。森下さんは、今はそのようなそぶりを見せないので意外です。
私はこの1年、日々手探りで働いていました。特に会議で議論されている内容を理解するのが大変でしたね。今は少しずつ慣れてきたものの、まだ自分の思うように仕事が進められないもどかしさがあります。
加藤:私も二人同様、1、2年目は大変だった記憶があります。周りの先輩社員は本当に優秀な方ばかりでしたが、新人の私は目の前の仕事をこなすのに必死でした。
── いつ頃から仕事に慣れてきた感覚がありましたか。
森下:私の場合は2年目の後半くらいでしょうか。1年目のときは業務一つとっても、これから何が起きるのか、何を求められているのか、わからないことが多い状態で働いていました。1年間試行錯誤を続けるうちに、次に何をすべきか予測できるようになり、少しずつ効率的に仕事を進められるようになった気がします。
加藤:私も同感です。仕事に着手するときは、どのようなアウトプットを期待されているかをよく理解し、そのためにはどのようにアプローチするべきかを考えながら進めていくことが大事だと思います。その結果、期待値に応えられるようになってきた時に初めて「仕事に慣れてきた、仕事をやり遂げた」という感覚が得られるのかもしれません。逆に言えば、1年目で全て完璧にこなせる人はいませんし、それが当たり前だと思います。
伸び伸びと働くために、高みを目指すために、必要なこと。
── 学生生活とのギャップがあったというお話がありましたが、学生の自分に社会人の自分からアドバイスするとしたら何でしょうか。
谷口:私は二つあります。実務的な話ですが、論理的な考え方を持つことと語学力を伸ばすことです。まず、仕事を進める際に自分の考えについて根拠をしっかりと示しながら、相手にわかりやすく説明できなければ、関係者を説得できません。ここ最近私自身が、論理的な考え方の大切さを身に染みて感じています。
語学力について、現在行なっている主に国内を対象とした採用ブランディング業務においては必須ではないのですが、今後担当する業務によっては使う場面も出てくると思います。自分のキャリアの選択肢を広げるためにも、語学力を鍛えておくことは必要なことだと感じています。
森下:難しい質問ですが、挫折も含めてたくさん挑戦をすることでしょうか。社会人になって数年たった今、ある有名な教授がおっしゃっていた「高く飛ぶためには、思いっきり低くかがむ必要がある」という言葉がよく思い浮かびます。壁に当たることで、物事に対する取り組み方や姿勢を根本から見つめ直すことができ、より高い熱量で次の挑戦に向かっていけると思います。学生時代の自分に対しては、高い目標に向かって挑戦する経験をし続けてほしいとアドバイスしたいです。
── では、社会人として働くようになって、改めて大切だと感じていることはありますか。
森下:良好な人間関係です。よく、人間の悩みの多くは人間関係に起因すると聞きますが、社会人になってその通りだと実感することが多いです。良い人間関係を築くためには、単なる仲の良さだけではなく、お互いに尊敬できる関係でいられることや、心理的な信頼感が保たれていることも重要だと思います。自分の職場が自由に意見を言い合える雰囲気だと、働きやすいと感じるのではないでしょうか。
谷口:お互いを認め合える環境があることも大切ですよね。
加藤:そうですね。さらに、同じ価値観を共有できることも大事だと思います。何のためにこの仕事をするか、そのために今何をすべきか、一緒に仕事を進めるメンバー同士、目指す方向が同じであればチームとして協力しやすくなります。また、オンとオフの切り替えも大切です。この仕事を頑張ったら週末に旅行があるなど、自分自身へのご褒美があると仕事もより楽しくなると思います。
仕事でしか手に入らないものがある。
── ズバリ働くことは楽しいですか。
森下:楽しいですよ。ソニーに入社してそう感じる瞬間がたくさんあります。例えば、自分が初めて企画した仕事を上司から評価されたときはうれしかったですね。また、採用業務をしていると直接学生と接する機会が多くあるのですが、私と会話したことでソニーに興味を持ってくれたり、その後入社して生き生きと働いていたりする姿を見ると、この仕事をやっていて本当に良かったなと思います。
谷口:私は入社1年目なのでまだ自分だけで仕事を進めることは少なく、先輩社員のみなさんから仕事のいろはを学んでいる最中です。その中でも、仕事に対して自分なりに考え、工夫を凝らすことで良い結果につながった場合などに、チームの皆さんに褒めていただけたりすると仕事が楽しいと感じます。
加藤:私は以前セールス・マーケティングを担当するグループ会社で広告宣伝に関わる仕事をしていたのですが、やはり自分が携わった仕事がSNSやニュースに取り上げられたときは、とてもうれしかったです。自分が全力で取り組んだものが誰かに認められると自己肯定感が上がります。その醍醐味を知って、仕事に対するモチベーションはぐんと高まりました。
森下:まさしく私も、仕事でしか得られない楽しさを最近感じているところです。自分がとった行動に対して誰かに感謝されたり、社会から評価されたりする喜びは、仕事を通じてこそ得られると思います。
── 楽しいと感じる経験がある一方で、大変な瞬間も必ずあると思いますが、仕事上で悩んだりストレスを感じたりした時に皆さんはどのように対処していますか。
加藤:仕事でも何でも、自分自身が経験したことが次の行動のヒントとなり、つながっていくと考えています。例えば何かの問題に直面したとき、過去はどのように対応して乗り越えたのか思い返してみることも対処法の一つだと思います。また、時には立ち止まって冷静になって考えてみたり、誰かに相談して複数の視点から対処法を模索したり、自分なりの正解を見つけることが大切ではないでしょうか。私の場合、壁にぶつかると、いつも思い出す先輩の言葉があります。「止まない雨はないし、明けない夜もない。」この言葉を唱えると、なるようになると思えて気持ちが楽になります。
森下:どのような仕事にも目的意識を持つことでしょうか。私の場合、大きな仕事を任せていただいたときよりも、一見細かいけれど大事な仕事に対応しなければならないときの方が大変だと感じます。そういうときは、この仕事が自分の成長にどうつながるか、仕事全体を俯瞰して見た時にどういう影響を持つのか、その仕事をやる意味や目標を見つけてから取り組むように意識しています。
谷口:私が仕事に悩んだときや業務が立て込んでいる時によくするのは、自分が今置かれている状況を紙に書き出してみることです。視覚的にわかりやすく一回整理して、自問自答を繰り返すことで頭がクリアになります。また、この仕事をしているのは自分しかいないという仕事に対する当事者意識を強く持ち、前向きに取り組むようにしています。
キャリアの変化を楽しむ。
── それぞれ違うキャリアのフェーズにいらっしゃる皆さんですが、今後のキャリアについてどのように考えていますか。私を含め、キャリアの道筋が見えなくて不安を抱いている学生に一言お願いします。
森下:入社当時、チューターから計画的偶発性理論について教えていただいたことがあります。個人のキャリアは偶然の出来事の積み重ねによって決定されるという前提のもと、偶然をチャンスと捉えて生かすことで、自分のキャリアをよくしていく考え方です。この理論に則って考えると、学生の時に明確なキャリアプランを思い描けていなくても、それは決して悪いことではないと思います。一方で、さまざまな巡り合わせによって舞い込むチャンスを生かすためには、広い視野を持ち、柔軟に対応できる準備が必要だと思うので、興味があることがあれば積極的に情報収集してみるのがよいかもしません。
谷口:私はまだ入社して1年なので、具体的なキャリアプランを持っているわけではありませんが、人に寄り添える人になりたいという思いは入社前からずっと持ち続けています。自分が発した言葉や体験したことが、誰かの人生にとって重要な分岐点になるような、人をサポートできる存在になりたいと思います。ソニーは経営の方向性を「人に近づく」としているので、私も自分の仕事を通じて「人に近づく」ことを模索していきます。
加藤:個人的な考えですが、キャリアを考えるとき自分のやりたいことと自分ができることの二つの側面で考える必要があると思っています。元々思い描いていたキャリアプランに固執せず、時には状況や経験、自分の特性を見つめ直して、柔軟に変化させることも大事です。
<編集部のDiscover>
取材の中で「悩みがあるときどうしていますか」と質問をしましたが、私は、信頼できる人に話すようにしています。悩みを言語化すると、話し終えたときにはその不安が小さくなっていたり、自分には思いつかない新たな角度からヒントをもらえたりするからです。
そこで今回は、日々インターン業務を進める上でサポートし続けてくださった3人の社員の方に、自分が不安に思っていることを軸に相談をしてみました。3人から異なるアドバイスをいただいたように、日々の仕事やキャリアに対する考え方には人の数だけ答えがあると思い、ほっとしました。
記事を通じて、これから社会人になる皆さんや就職活動を始める方が、少しでも働くことにわくわくできていたらとてもうれしいです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。