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ソニーという期待とプレッシャーを背に、世界が納得する映像制作ソリューションへ。「M2 Live」「M2L-X」、2つのサービスを進化させてきた2人が共創の苦労と喜びを語る。

Business

「ソニーが提供するサービス」だからこそ期待され、厳しい意見をもらえる。期待されているからこそ、良いものを作ることができる。
今回の記事では、クリエイターとの共創で進化を続けるBtoBサービスに注目。ライブ制作用の新しいソフトウェアスイッチャー※「M2 Live」と「M2L-X」を取り上げます。ネットワーク上のどこからでもリモートで操作でき、ライブ配信や映像制作において設備投資や時間の制約を取り除くサービスです。中でも「M2 Live」は、ソニーが提供するクラウド映像制作ソリューション「Creators’ Cloud」の一環として開発されています。
これらのサービスを開発する過程で、クリエイターの意見をくみ取りながら、世界が納得するソニーのサービスを追い求めるエンジニアの宮﨑さんとマーケティング担当の鈴木さん。期待されているからこその難しさとやりがいについて、お二人に話を伺いました。

※ソフトウェアスイッチャー:ライブ配信コンテンツにおいて映像の切り替えを行ったり、演出や映像効果を与えたりするスイッチャーシステムを、ソフトウェアベースで設計したもの。

宮﨑 拓也
鈴木 まり
渡部 優基

新しいサービスだからこそ、コミュニケーションは綿密に。

── お二人の担当業務について教えてください。

宮﨑:クラウド上でソフトウェアを使ったライブシステムを構築する業務に携わっています。もともと放送局で使用されるネットワーク機器の開発をしていたので、放送局のシステムに関する技術を持ったエンジニアとしてチームにアサインされました。システムの構築だけでなく、開発途中でプロトタイプをクリエイターの方々のもとに持っていってフィードバックを受けたりもしています。

鈴木:マーケティング担当として「M2 Live」や「M2L-X」の国内向けビジネス展開を検討する業務を担当しています。基本的なビジネスフローは、国内や海外の販売会社から事業部のマーケティング担当にユーザーの意見が集約し、そこから設計・開発チームにフィードバックを送るという流れですが、「M2 Live」や「M2L-X」がクラウド×ソフトウェアという新しい試みということもあり、開発担当の宮﨑さんと直接お話する機会も多いです。

── マーケティングチームと設計・開発チームが近い距離で連携しているのですね。「M2 Live」と「M2L-X」はどのような経緯で開発されたのでしょうか。

宮﨑:「M2 Live」については、コロナ禍でリモート制作の需要が拡大したタイミングで、ソニーでは強いハードウェアの開発に加えて、クラウドを活用したソフトウェアの開発が始まりました。

鈴木:もともと国内の放送業界では、コストカットと設備の共有化のニーズが高まっていました。また海外でも大掛かりな機材などの”物を持たない”という流れもあるなど、国内外でクラウドサービスへのニーズの高まりも背景にあると思います。

宮﨑:IT業界ではその“物を持たない”という価値観が重要視されていましたが、「M2 Live」の開発過程では、実は放送業界では「物を自分で持ちたい」「慣れ親しんだ物を使えるよう(クラウドサービスを)カスタマイズできるようにしてほしい」という声が多いことも分かりました。そこで顧客環境に合わせて導入可能なソフトウェアパッケージとして開発したのが「M2L-X」です。

「M2 Live」(左)「M2L-X」(右)

信頼されているからこそ、クリエイターと二人三脚で良いものが作れる。

── どちらもクリエイターの方々の声を元に開発されたものなのですね。クリエイターの方々とのコミュニケーションはどのように行っているのですか。

鈴木:営業担当がクリエイターからの意見を持ち帰ってくれることもありますし、展示会やデモンストレーションなど直接話し合える場や機会を作っています。特に放送業界では何か新しい製品・サービスが出たら、まずはソニーのものを使ってみたいと言ってくださることが多いのがソニーの強みの1つです。

また、クリエイターの方々の意見を宮﨑さんのような設計開発チームのメンバーに伝える際も、それを実現することでビジネスに対してどの程度よい影響があるのか定量的な度合いをうまく説明するように意識しています。これはまだまだ難しいですが、マーケティング担当として必要なテクニックの1つだと思います。

── ソニーの製品やサービスが信頼されている証ですね。クリエイターの方々からフィードバックを受ける中でどのような点が印象的でしたか。

宮崎:こだわりが強く、求められるものが人によって全く違うということです。これがあれば何でもできるというサービスを求める方もいれば、慣れ親しんだソフトウェアと連携できるサービスを求める方もいる。私も最初は何でもできるすごいサービスを作ればよいと思っていたので、そこは大きな気付きになりました。

鈴木:クラウドサービスという観点だとソニーはまだ新参者な部分もありますが、実際にサービスを触った時にクリエイターの方々から「やっぱりソニーのサービスは使いやすい」と言っていただけると、とてもうれしく思いますね。

宮崎:エンドユーザーと面と向かって握手しながら、ありがとうと言っていただけるのは法人向けサービスの良いところだと思います。

世界に認められるソニーのサービスへ。

── サービスを使う方々と近い距離で開発できるのは魅力的ですね。逆に厳しい意見はありましたか。

宮崎:もちろんありました。放送局の方々が求める映像品質とライブで求められるリアルタイム性を、クラウドとソフトウェアで両立させるのは技術的に難しい話でした。お客様はこれまで使用していたハードウェアと同じクオリティを求められるので、このままでは使えないという厳しい意見もいただきましたが、こう言っていただけるのもやはりソニーへの信頼の証だと思います。

鈴木:何か新しいことを始めるときに、ソニーだったら話を聞いてみようと思っていただけるのは大きなアドバンテージです。開発段階からお客様に認められるサービスのものを作ろうという気持ちが、お客様のソニーに対する信頼につながっていると思っています。国内だけでなく世界でも認められるようなものを作り上げる必要がある一方で、技術的にもコスト的にもすべての声をくみ取れるわけではないので、何が本当に必要なのか見極めるスキルはついたと思います。

── 期待されているからこそ、実現したいという気持ちになりますね。お二人の間で意見の対立や議論が巻き起こることはありますか?

鈴木:もちろんあります。クリエイターの方々からの意見の中で取り入れられないものがあったり、機能の実装が遅れてしまったりしたときは、それをクリエイターの方々に説明しなければならないので、設計・開発チームに対してその理由を尋ねることはあります。

宮崎:国内だけでなくグローバルに意見を集めた時に、要件の優先順位をつけなければならないのですが、その理由づけのためにマーケティングチームに「これを実装したらどのようなビジネス的な影響があるか」という情報を要求することは多いです。クリエイターの方々は自分の意見を製品に反映させたいですし、開発チームとしても頭に思い浮かんだ機能を全部開発したいのですが、リソースが限られている中でどのような選択をしたら一番喜んでもらえるかを見極めるのがとても難しく感じます。

鈴木:実は「M2 Live」は4回のバージョンアップを経ています。これは他の製品やサービスと比べてもかなり多い頻度で、設計・開発チームはマーケティングチームから嫌というほどフィードバックを受け取っているはずです。国内ではクラウドである必要が本当にあるのかという声もある中で、クリエイターの方々に納得してもらえるようなサービスにまで開発が進んだのは、フィードバックを真摯に受けとめてくれた設計・開発チームのおかげです。そのサービスをどのように販売していくかは私たちマーケティングチームが頑張らなければいけないところだと思っています。

これからもクリエイターの方々の顔が見える距離で。

── 「M2 Live」や「M2L-X」を今後どのように進化させていきたいですか。

宮崎:放送業界ではサーバーをいくつも積み重ねてクラウド・ソフトウェア上でライブ制作をするという考え方が急速に広がろうとしています。そういった世界になった時に、ソニーの放送機器が活躍できるようソフトウェアサービスとしてどんどん発展させていきたいと思っています。私自身も放送業界のトレンドを見ながら新しいことに積極的に挑戦していくとともに、まずは国内でソフトウェアやクラウドなどの新しいライブ制作の世界を提供していくお手伝いを、鈴木さん含めチームの皆さんと一緒にしていきたいです。

── 最後に、BtoBビジネスに興味がある読者にメッセージをお願いします。

宮崎:この仕事の一番の魅力はクリエイターの方々と直接顔を見てお話できることだと思います。また、放送業界でソニーは大きな信頼を寄せていただいているので、実際に皆さんがご自宅で観るようなライブ映像の制作に関わることができる点にも興味を持ってもらいたいです。

鈴木:一般に、就職活動をされている方からはBtoCのほうがお客様との距離が近いと思われがちですが、実はBtoBでも距離が近く、特にマーケティングや営業は一番お叱りをいただく半面、一番褒めていただける業務です。そして自分の携わった仕事の反響を間近で見ることができるのが魅力だと思います。大変なこともありますがやはり喜びが大きいので、今後もBtoBのビジネスに携わっていきたいです。

<編集部のDiscover>
何度も改善を重ね、クリエイターの方々に納得してもらえるものに仕上げていく。厳しい意見もあった、大変さもあったと話す際も、お二人の表情は楽しそうでした。信頼され、期待されるソニーとして、品質に妥協せず、向き合い続ける。確かに大変なこともありそうですが、マーケティング、設計開発ともにとてもやりがいがあって楽しそうな業務だと強く感じました。


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