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終わりのないマーケティングを通して、お客様に寄り添った感動を。

Business

メディアのオンライン化や、スマートフォンなど情報デバイスの進化を受けて、企業のマーケティング活動も進化と複雑化が進んでいます。そのため、マーケティング職といってもどのような仕事を行うのか、イメージしづらい方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は、ソニーが取り組んでいるカスタマーマーケティングについて、ミラーレス一眼カメラα™(Alpha™)などデジタルイメージング製品のマーケティングを担当する丸山さんにお話を伺いました。従来のマーケティングとの違いや目指していること、業務のやりがいに迫ります。

丸山 直樹
藤井 絢

「購入」で終わらないマーケティングへの挑戦

── ソニーでは、新しいマーケティングモデルに挑戦されていると伺いました。どのようなモデルなのでしょうか。

一般的には、カスタマーマーケティングと呼ばれるものです。従来のマーケティングだと、製品やサービスをお客様にご購入いただくことを目標とした一方通行の直線的な活動になりますが、今取り組んでいるのは、ご購入後もお客様と私たちがさまざまなタッチポイントを通じループ状につながり続けることを目指すマーケティングです。
私が担当するイメージング製品では、「モチベーションループ」というコンセプトで活動しています。具体的には、お客様がカメラをご購入されてからさまざまなご提案や施策を紹介し、お客様がご自身のカメラで撮影したいというモチベーションやカメラへの愛着を高め、ソニーのカメラを長く使い続けてもらうことを目指しています。お客様にとっては製品を通じた体験がさらに豊かなものになると思っていますし、ソニーにとっても有益であると考えて推進しています。

── ループ=円を描くように、製品の購入をきっかけとして、お客様とつながり続ける活動なのですね。そのような活動をすることになった背景を教えてください。

国内におけるカメラ業界の成長が全体的に落ち着いてきたこと、その中でのソニーのポジションが目指していたものにかなり近づいたことなどが挙げられます。また、我々が担当するマーケティングはハードウェア製品に対するものが多いですが、昨今はシェアリングエコノミ—やサブスクリプションサービスなど無形商材が好まれやすくもなっています。このような状況で、今後は業界における自社のポジション向上を目指すシェアマーケティングだけではなく、カスタマーマーケティングにも力を入れることがよりビジネスの拡大につながると考えました。

── シェアマーケティングとカスタマーマーケティングには、どのような違いがあるのでしょうか。

大きな違いを挙げるならば、メインターゲットとなるお客様が異なります。シェアマーケティングのターゲットは、新規のお客様になります。まだソニー製品をご購入されたことがないお客様に対し、製品やサービスの価値を知っていただき、ご購入いただくことを目標としています。
一方カスタマーマーケティングは、既にソニーの製品やサービスをご購入いただき、ご使用になっているお客様をターゲットとしています。ご購入後も継続的にアプローチし、お客様のソニー製品に対する信頼や愛着を高めることで、長期にわたってソニー製品をご愛用いただくことを目指します。

── そのようなマーケティングに取り組むようになったのはいつからですか。

これまでも取り組んでいましたが、より本格的に始動したのは、2023年の4月です。先ほどお話ししたモチベーションループにおけるタッチポイントの仕組みなどを細かく決めた後、私の所属するデジタルイメージングビジネス部にて、取り組み始めました。

カメラだからこそ、生きるマーケティング

── 丸山さんが所属されるデジタルイメージングビジネス部では、ミラーレス一眼カメラのαシリーズを主に扱っていると伺いました。なぜαシリーズで、このマーケティングを導入することになったのでしょうか。

カメラとカスタマーマーケティングは、非常に親和性が高いと考えています。まず、カメラで撮影を続けていくと、「もっと上手に撮りたい」という向上心が芽生えやすいです。そのため、お客様にとってレンズの追加購入などのステップアップがしやすいことや、撮影という体験において我々がノウハウを提供するなどサポートしやすいことが挙げられます。このような点を踏まえ、お客様がカメラを購入したあともさまざまな方法でアプローチできることから、このマーケティングを他カテゴリーの製品に先行して力を入れていくこととなりました。

── 現在のマーケティングモデルを導入される際に、どのようなことから取り組み始めたのですか。

組織間での連携を大きく変えました。それまでもαカフェ※1やαアカデミー※2といったαシリーズに関連する施策は行っていましたが、それぞれ別々に独立して運営しているような印象でした。今回の取り組みを行う際に、αシリーズのマーケティングに関わる社員が一つの大きなプロジェクトに参加する形に変更しました。結果、同じ目的の下で、別々だった施策がつながりながら、それぞれの施策を推進するようになりました。これは大きな一歩になったと考えています。

※1 αカフェ
ソニー製のカメラ、レンズ、VLOGCAM、Xperia(一部機種)で撮影された写真・動画作品が集まる作品ギャラリー&コミュニティサイト。
詳細は「αカフェ」のページへ

※2 αアカデミー
初めてカメラを手に取った方から、プロを目指して活動している方まで、幅広い層の方の撮影技術の向上と創作活動を支援するカメラスクール。
詳細は「αアカデミー」のページへ

── このマーケティングにおける工夫についてお伺いしたいです。

例えば、お客様のデータを分析する際のセグメンテーションを細かくしています。カメラのスキルレベルから、野鳥・鉄道・人などの撮影興味のジャンルまでを事象別に分けることで、そのセグメントに当てはまる方により効果的なサービスの提供ができます。例えば、野鳥の撮影に関心が高い方にαアカデミーの野鳥の撮影方法に特化した講座の案内を送ったり、αカフェで他のユーザーの野鳥の写真をご紹介したりすることで、αシリーズのカメラでの野鳥の撮影がより楽しくなるような取り組みを行っています。

大変だけれど楽しい、切磋琢磨できる仕事環境

── 仕事の中で、どんなときにやりがいを感じますか。

理想として考えていたことが実現できる道筋が見えたときですね。仕事の一環としてフォトコンテストなどのイベントに関わることもあるのですが、そのような場で受賞された方やフォトグラファーから、ソニーが運営するαカフェやαアカデミーを利用してくださったと言っていただく機会がありました。何より私たちが提供している環境やプロセスを経て一般の方がクリエイターとして有名になったり、フォトグラファーになったりした姿を拝見すると、これまで取り組んできたことが間違っていなかったのだと思えて、一つひとつ強く印象に残っています。

── そのようなこともあるのですね。一方で、大変だったことはありますか。

これまで行ってきたシェアマーケティングからこのカスタマーマーケティングにバランスを移行していくことは、一つの事業を立ち上げるぐらい大きな出来事だったので、クリアしなければならない課題も多く、私自身も大変でした。例えばαアカデミーにはカメラの使用方法を中心とするさまざまな講座があり、多くの方にご参加いただいていますが、お客様のニーズに応える新たな講座を開講するためには、まず講師を探す必要があります。加えて関連する活動をαカフェとも連動して行うなど、一つの事柄を立ち上げるために、複数の施策をまたいで準備する作業は特に大変でした。

── さまざまな課題を乗り越えることができた要因はなんだったのでしょうか。

シェアだけではない自社のポジションの向上という目標を達成するために関係者全員が新しいマーケティングアプローチが必要だという共通認識を持ち、力を合わせて取り組めたことだと思います。そのような目標に向かって仕事をすることはとても刺激的でしたし、その目標を実現できるかもしれないと感じた瞬間には、自分自身やる気がみなぎりました。また、行動力が高いプロジェクトメンバーが多く、お互い感化しあいながら取り組むことができたと思います。

── 「行動力」というキーワードも出てきましたが、丸山さんの考えるソニー社員の特徴とはなんでしょうか。

私の周りには、仕事もプライベートも全力で楽しむ、バイタリティに溢れる方が多いです。難易度の高い仕事が続いているような状況でも週末には泊まりがけで旅行に出掛けていたり、仕事量の多い出張先でも趣味の運動を欠かさなかったりと、プライベートを大切にし、充実させている姿に驚かされることが多々あります。だからこそ逆に、仕事にも前向きで全力で取り組めるのかもしれないなと感じます。

ソニーは誰もが持つ「表現したい」という意欲を支援し続ける存在だと伝えていきたい

── カスタマーマーケティングで、今後目指していく理想像はどのようなものですか。

ソニーは誰もが持つ「表現したい」という意欲を支援し続ける存在である、ということを伝えていくことが、私たちのカスタマーマーケティング推進におけるスローガンにもなっています。良い製品を生み出す際には開発者や技術者の力が欠かせませんが、マーケティングを担当する私たちの業務は、この生み出された製品の魅力をさまざまな接点を通じてあますことなくお客様に伝えることです。極端にいえば、製品に対するお客様の印象や評価については、マーケティングによって左右されるともいえます。
つまり、マーケティングの土台が盤石であればビジネスに大きく貢献できるということなので、今後もしっかりとした土台のもと、スローガン達成のため活動していきたいです。

── 丸山さんが今後取り組みたいことはありますか。

現在は担当するαシリーズにとどまっていますが、違うカテゴリーのソニー製品とコラボレーションした施策を行いたいですね。例えば、カメラで撮った写真をテレビで見る、あるいはカメラで撮った動画をスピーカーとつなげて良い音で楽しむなど、機能的に製品同士をつなげるという話は従来からありますが、こういった製品同士のつながりによって生まれる楽しみ方をマーケティングの視点から構築するという話はまだあまりありません。さまざまなカテゴリーの製品を同じグループ会社内で揃えられるからこそ挑戦しがいがありますし、この取り組みを通じてさらなるビジネス貢献につなげたいと考えています。

── コラボレーション、お話を聞くだけでもワクワクします。そんな丸山さんの考える、マーケティングに関わる人に求められる力は何でしょうか。

好奇心(探求心)、行動力、人間力の3つでしょうか。マーケティングに関わるにあたり、まず基本として、自分が気になったことに対してとことん深く追い求めていく姿勢が大事だと思います。加えてこの姿勢にとどまらず、次の行動に移せる行動力も重要です。さらに、マーケティングは個で完結する業務ではなく、多くの関連部署との協力によって成り立つ業務なので、さまざまな専門性をもつ他部署の社員や同じチームの同僚とも強い関係性を築き、協業できる体制を構築できる人間力も必要だと思います。
ただ、これらの力は特別な人だけが持つ能力というわけではないと思っています。能力を明確に持っているかではなく、このような能力を意識した姿勢で行動できているかが重要ではないかと感じています。

── 最後に、読者にメッセージをお願いします。

マーケティングという観点からお話しすれば、「よく遊びよく学べ」の精神がとても重要であり、確実に現在の仕事に生きていると感じます。また、マーケティングは特別な知識や能力を持っていなくても、本人の気持ちや仕事に対する姿勢次第で活躍できるフィールドだと思うので、マーケティング職を目指している方はこれまで自分が取り組んできたことに自信を持って、挑戦してみてほしいです。
また、自身の市場価値をぜひ考えながらキャリアを築いてほしいと感じます。私は経験者採用でソニーに入社しましたが、前職でもカメラに関する仕事を幅広く経験していたこともあって、現在の仕事を任せていただけていると考えています。将来像を思い浮かべながら、そこに近づくためにはどのような経験やキャリアが求められるかを想像し、ご自身の経験値を積んでいくことも重要だと思います。


編集部のDiscover
丸山さんが率いるチームのマーケティングに対する思いの強さを感じた取材でした。取材の中で特に印象に残ったのは、「スマートフォンで気軽に撮れるようになった今だからこそ、カメラでしか届けられない感動を届けたい」という言葉です。私も、最近はスマートフォンで満足してしまっていましたが、これを機に、α™(Alpha™)を購入して、ソニーのマーケティングを実際に体験してみたいと感じました。


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