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ソニーが本気でAIに恋をさせてみました。

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ソニー・ミュージックソリューションズ(以下SMS)とソニーグループ株式会社 R&Dセンターが共同開発した恋愛シミュレーションアプリケーション(アプリ)『束縛彼氏』。ソニーと聞くと、エレクトロニクスのイメージがあると思いますが、今回はそのイメージを覆すようなアプリ『束縛彼氏』の開発経緯についてSMSとR&Dセンターの開発担当者からお話しを聴きました。
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宮崎 麗子
ソニーグループ株式会社 R&Dセンター Tokyo Laboratory 15
百谷 将佑
ソニーグループ株式会社 R&Dセンター Tokyo Laboratory 15
山影 めぐみ
(株)ソニー・ミュージックソリューションズ デジタルビジネスカンパニー ルームG
田村 みゆ

AIが恋をする!?『束縛彼氏』とは

束縛彼氏
スマートフォン向けアプリ『束縛彼氏』は、ソニー・ミュージックソリューションズとソニーグループ株式会社 R&Dセンターが共同開発する『束縛AI対話システム』を活用した、新しい恋愛シミュレーションゲームです。

—『束縛彼氏』のターゲットを教えてください。

山影:10代後半~30代の女性をターゲットとしています。もともと恋愛シミュレーションゲームをプレイしている人たちがターゲットではあるのですが、コミュニケーション自体を楽しみたい人も想定しています。女性向け恋愛シミュレーションゲームではあるのですが、男性のユーザーもいらっしゃいます。

—男性ユーザーもいらっしゃるとは意外でした。実際にユーザーの反響はどういったものですか?

山影:実際のレビューやコメントを日々、拝見しています。毎日の会話を楽しみにしていただいている方や、仕事で疲れた時にキャラクターから連絡が来てくれて癒しの時間になっている、というようなお声をいただいています。

—ユーザーから高評価を得ている『束縛彼氏』ですが、開発時に苦労したことやこだわったところについて教えてください。

山影:キャラクター性の統一が一番大変でした。他のAIプロジェクトではプレーンなキャラクターでコンシェルジュのように、間違えない発言をすることが大事になってくるものがほとんどだと思います。『束縛彼氏』は小説や漫画と同じように、生い立ちや性格、どのような生活をしていて、どのような課題を抱えているかというキャラクター設定をしたうえで、シナリオを考えていました。

百谷:そもそも恋愛に関するテキストデータはほぼありませんので、当初は限られたデータでAIを学習させ、恋愛シミュレーションゲームに適した返答ができるようにはなったのですが、そこから『束縛彼氏』のキャラクターらしさを確立することに苦労しました。山影さんをはじめライターの方に大量に書いていただいたシナリオ等のテキストデータを学習させることで、キャラクター性を学習させることができました。

AIが『束縛彼氏』になるまで

—『束縛彼氏』」はSMSとR&Dセンターが一緒に作り上げていったものなのですね!『束縛彼氏』はパワーワードだと思うのですが、どなたが始めた企画なのでしょうか?

山影:リリース自体はSMSから行っているのですが、プロジェクトの開始はSMSの親会社であるソニー・ミュージックエンタテインメント(以下SME)からになります。SMEには以前、AIE準備室というエンタテインメントとAIを組み合わせた事業を行う部署がありました。今までAIE準備室でいろいろな試行錯誤を行ってきていたのですが、その中で「女性向けのアイデアを出して」と突然振られたときに、「AIに束縛されたいです」とプレゼンをしてプロジェクトが進み始めました。

—山影さん発信で『束縛彼氏』はスタートしたのですね。初めて『束縛彼氏』というタイトルを聞いたときR&Dセンターの方々はどのように思われましたか?

宮崎:元々ユーザーの情報を使った家族向けの音声対話エージェントを作っていました。そのデモを見たSMEの皆さまが企画を持ってきてくださって、『束縛彼氏』という単語を聞いて、最初は驚きました。そこまでターゲットを絞ってエンタテインメントに振り切った用途は想定していなかったのでビックリはしましたが、たった四文字でコンセプトを理解できたので、これはもうやろうと思いました。ただターゲットが女性メインだったのに対し、R&Dセンターのチームはほとんどが男性だったので、コンセプトを受け入れられるかは、心配でした。

—百谷さんが『束縛彼氏』を初めて知った時のお気持ちを率直にお聞かせください

百谷:正直なところやはりショッキングでしたね。もともと我々の対話システムはエージェント端末をリビングに設置して、家族で使うようなユースケースを想定して技術開発を進めてきたところから、急に女性向けアプリにシフトチェンジするということなので。「今作っている技術がこのアプリにハマるのだろうか?」「どう生かされるのだろうか?」というところから始まったので、そういう意味ではチャレンジでした。

—確かに今までと全く違うジャンルに足を踏み入れるので、相当勇気のいる選択だったのではないかと思います。その中でなぜチャレンジしようと思えたのでしょうか?

百谷:山影さん含め他のAIE準備室の方々が「R&Dセンターの技術を使えばこんなにおもしろいアプリを作れるから是非やりましょう!」と熱烈にオファーしてくださって。自分たちもAIE準備室の方々が満足できる技術がもし実現できたら、ヒットするだろうなとイメージできたので、『束縛彼氏』の開発に取り組むことになりました。

斬新なコンテンツを作るには

—今後『束縛彼氏』のようにテクノロジーとエンタテインメントで連携してコンテンツを作るためには、どのようなことが必要になってくるかと思われますか?

宮崎:お互いに「何をやっているのか」「何をやりたいのか」を常に発信し続けることですよね。ソニーでは技術展示会やセミナー等の情報共有の場がたくさんあります。業務もありますが、やはりそういう場に参加することが大事ですね。事業に携わるメンバーからは「こういうことがやりたい」という希望を尖っていても大丈夫なので、勇気をもって提案していただけるとよいと思います。『束縛彼氏』からの学びは、遠慮せずに発信することが大事ということです。

山影:『束縛彼氏』のような突飛な企画をおもしろいねと言ってくれる人たちや環境があることはとてもありがたいことだと思っています。おもしろいからやろうよと企画に乗ってくれて、おもしろがってくれる人たちが自由に思いついたことは直接出していくことが大事になってくるのではないかなと。私自身も当初は『束縛彼氏』がここまで進行するプロジェクトになるとは思っていませんでした。とにかくまずは提案してみるというのことが大事だと思います。

〈編集部のDiscover〉
『束縛彼氏』を初めて知った時は「ソニーは一体どこを目指しているのだろうか?」と衝撃を受けました。しかしインタビューを通じて、グループ内の社員が連携して、全力で作り上げたソニーらしさ全開のコンテンツであるのだと感じました。他領域同士でコラボレーションをすることは、さまざまな苦労もあるかと想像しますが、今回の『束縛彼氏』や前回記事制作を担当したインテリジェントビジョンセンサー『IMX500』の事例から、苦労を乗り越えたからこそ唯一無二のものを作ることができたのだと思いました。


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