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「顧客視点」のプロであるために。ソニーの若手マーケターにインタビュー

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就職活動をしていると耳にすることも多い「マーケティング」という言葉。ソニーのマーケティング業務に興味がある方も多いのではないでしょうか。
今回お話を伺うのは、マーケティングの中でも、主にマーケティングコミュニケーションに関する活動を担っている八谷さんです。八谷さんの実際のご経験をお聞きしながら、ソニーのマーケティング業務について深掘りしていきます。
※記事に掲載している情報は取材当時のものです。

八谷 麗佳

「顧客視点」のプロであるために

── 八谷さんが所属している部署ではどのような業務を担当しているのですか?

ソニーマーケティング株式会社は、ソニー製品の国内におけるセールス・マーケティング活動を担っています。テレビやカメラ、オーディオなど一般のお客様向けの製品に限らず、放送局など法人向けの製品も扱っています。私が所属している部署では、広告宣伝などを含むマーケティングコミュニケーション活動全般を担当しています。

──コミュニケーション活動を計画する上で、新たな試みを始めたと聞きました。

従来は「製品」の機能や特長を軸とした戦略を立て活動していたのですが、最近では「COI​」を軸に据えた戦略を立て活動しています。「COI」は「Community of Interest」の略で、感動体験や関心を共有する人々のコミュニティを意味します。
私たちはこの「COI」の観点から、ターゲットとなる顧客に向けたソニー製品の体験価値への気づきの接点を作り出し、共感や体験してみたい気持ちを醸成することを目的として取り組んでいます。そのために、市場の状況や、顧客の関心事・ニーズを把握し、綿密な分析を行い、戦略立案や具体的なアクションに反映しています。
例えば私のチームが担当している「音COI」では、音楽を中心とした「音」を楽しむことへの関心が高い人たちを主なターゲット層としています。扱っている製品はヘッドホンやウォークマン®などのポータブルオーディオ製品、そして昨今は、スマートフォンを介して音楽を楽しんでいる人が多いことを鑑み、スマートフォンも扱っています。

── 八谷さんが主に関わっている活動はどのようなものですか。

私は「音COI」のコミュニケーション活動の中でも、特に若年層をターゲットにしたプロモーション活動を担当しています。今扱っている製品は、ワイヤレス型ヘッドホン『​LinkBuds S』と、スマートフォン『Xperia 5 V』です。若年層の共感を得られるようなプロモーションコンセプトを設定し、そのコンセプトと親和性の高いアーティストを起用するなどして、ウェブやテレビCMなどの動画広告や、グラフィック広告、バナー広告などを制作します。そして、コンセプトに合わせてPRやSNS投稿による文脈設計も行います。特に広告物の制作時には細かいディレクションが必要となるため、実際の撮影現場や編集作業にも立ち会います。加えて、広告物と顧客の接点となるメディア展開についても計画・実行します。

これらの製品で意識した共感ポイントは、常に多くの情報に接しているからこそ生まれる逃したくないコンテンツを最高な状態で体験したい、という点です。「夢中になりたい瞬間は、いつくるか分からない。」というコンセプトで、24時間とめどなくいろいろな自分の「好き」が公開されるから、いつでも、どこでも、コンテンツを楽しめるデバイスを、という思いからたどり着きました。
また、キャンペーン公開日には主要なSNSにてウェブCMを重点的に発信し、若年層の利用が多いプラットフォームからのアプローチを意識しました。このように、コミュニケーション活動全般について、進行責任を担うのが私たちの仕事です。

──「コミュニケーション活動全般の進行」について、もう少し具体的にお聞きしたいです。

コミュニケーション活動を計画するにあたり、まずは製品のセールス・マーケティング活動を統括している製品担当チームからマーケティング戦略の方向性を共有してもらい、コミュニケーション活動全体の方向性を議論・調整して社内の合意形成を行います。次にその内容を踏まえて、制作チームと共に、具体的なコミュニケーション戦略の立案などを進めていきます。
私たちの役割は、製品の「良さ」を理解した上で、その「良さ」をどうお客様に受け入れてもらえるかを探り、考えることです。製品がもたらす体験価値について熟知している製品担当の意見を汲み取り、これを整理・集約して顧客視点での最適な届け方を制作チームと共に思考する。この役目を確実に遂行することで、コミュニケーション活動を通じて伝えたいことが反映された戦略や広告物として具現化されます。

完全燃焼でチーム戦を終えたような充実感

── これまでの業務の中で、八谷さんが苦労した点を教えてください。

社内外問わずさまざまな関係者とコミュニケーションを行う機会が多いのですが、その際相手の「真意」を汲み取るのが重要です。これを普段から意識するようにしているのですが、スケジュールに余裕がない場面などでは、つい自分の意思を優先してしまうことがありました。最近は少し余裕を持てるようになってきたので、立場は違っても、お客様により良い製品体験を届けたい思いは同じだという視点に立つことができるようになりました。今後も他のチームと意見がぶつかったり、噛み合わなかったりすることはあると思いますが、そのような時こそ「顧客視点」をよりどころに、議論を深めつつ、前進していきたいと思います。

── 一方で、どのようなやりがいがありますか。

ヘッドホンとファッションをテーマとした企画「​S.tyles」も担当しました

私が携わったプロモーション活動はいくつかありますが、どれ一つとして最後までハプニングもなく、スムーズに進行できたものはありません。しかし、さまざまな壁を乗り越え、実際にお客様が製品を手に取ってくださり「ソニーの製品は音質が良いから好きなコンテンツを満喫できる」といった喜びの声に触れた時にはすごくうれしいです。もちろんそれは自分だけでなく、関係者と一緒にチームとして達成できたからこそ得られることです。一つの活動が世に出て一段落すると、完全燃焼でチーム戦を終えたような充実感があります。

── これまでの経験を踏まえ、これからはこうしたいという思いはありますか。

これからは活動全体の進行だけではなく、自分なりの視点で具体的なコミュニケーション戦略を考えることにも挑戦してみたいです。実は以前、戦略立案について学んでみようと、社外の講義を受講したことがあったのですが、仕事を通じて実践しながら学んでいく方が自分には合っていると感じました。上司からも一番大事なのは「自分自身の心が動いているかどうか。自分自身が楽しいと思えているかどうか」と言われているので、今後はさらに自分の感覚を研ぎ澄まし、仕事に反映していきたいと思っています。

ソニーだからこその規模感と、求められるスピード感

── ソニーでマーケティング職に就こうと思ったきっかけを教えてください。

もともと経営やマーケティングの領域に興味があり、米国に留学していた大学3年の頃、特にその熱量が高まっていました。ちょうどその頃、就職活動の一環でボストンキャリアフォーラム※に参加し、コース別採用​を行っていたソニーに目が留まりました。
面接では学生の立場でありながらマーケティングの仕事を通してソニーをこうしたいと意気込んで語った私に、面接官の方がもっと聞かせてくださいと真剣に向き合ってくださったのが印象的でした。その時自分らしくやりたいことができる会社だと感じ、最終的にソニーへの入社を決めました。

※ボストンキャリアフォーラム…米国・ボストンで開催される、海外の大学・大学院で学ぶ留学生をはじめとするバイリンガル向けのジョブフェア。Discover Sony関連記事はこちら

── 入社後はセールスの業務も経験されたそうですね。

はい。マーケティングの基礎を勉強するために、入社して最初の1年半は福岡の営業所にセールスとして配属されました。主な業務は、担当店舗におけるソニー製品の売り上げ構築です。ときには自身が販売員として店頭に立ち、お客様と直接お話をする機会もありました。お客様のニーズや迷いどころをお聞きし、それに合わせてソニー製品をお勧めする。これは販売現場ではよく見かける商談シーンですが、プロモーションの戦略立案に必要な顧客視点の想像力を持つことができたのは、まぎれもなくこのセールス業務を経験したからだと思っています。

── 学生時代に考えていたマーケティングと、実際に仕事として携わるマーケティングのギャップはありましたか。

現実は厳しいと感じましたね。大学の卒業論文のテーマは「ソニーのブランディング」で、論理的に筋が通った良い論文が書けたと、自分では自信を持っていました。しかし、実際にソニーに入社してマーケティングの業務に携わってみると、一つの案件でも関係する部署が多く、さらにそれぞれの部署が抱える事情や考え方が違うことが常です。担当としてそれらを集約し一つにまとめるのは、かなりのスキルと労力が必要になることを痛感しました。ソニーでは一つ一つの案件の規模が大きく、関わる人も多く、スピードも求められるので、最初はついていけるか不安でしたが、とにかくやるしかないという気持ちでここまできました。

まずは、目の前のことに一生懸命に

── 八谷さんが仕事をする上で大切にしていることを教えてください。

どんな状況でも思考と歩みを止めないことが大事だと思っています。関係各所となかなか合意形成できず、全体の進行が滞ってしまいそうな時でも、少しでも変えられることはないか、これを相談してみたら何か変わるかと、小さくても歩みを進めることで、それが“大きな歩み”のきっかけになることもあります。
またマーケティング業務に携わる上では、常に情報感度を高めておく意識が必要だと思います。私が担当している若年層に関しては、そのありのままの姿が見られるのは、今はやはりSNSが中心だと思うので、こまめにSNSをチェックして、チーム内の会議などの場で、トレンドや拡散しているコンテンツの情報を共有するようにしています。

── 八谷さんの今後の目標をお聞きしたいです。

現在の仕事を通して学び続けるのはもちろんですが、個人的には、ソニーが持つ高い技術力を生かした社会貢献の領域にも携わりたいと思っています。一般的にマーケティングはとても広く多様な役割が含まれているのですが、根本は課題解決をすることだと私は思っています。社会の課題に対しソニーの製品やサービスがソリューションになることを、マーケティングの領域を通じて実現していきたいです。

── マーケティングの仕事に携わりたいと考えている読者の皆さんにメッセージをお願いします。

直接仕事には結びつかなさそうなことでも、目の前にあることに興味を持って、一生懸命にやってみる、そのプロセスが大切だと思っています。その後振り返った時に、自分はこういうことが好きなのか、こういうことへのアンテナが高いのかもしれないと自分について知ることができますし、その先々の仕事で活用できる自分の中の引き出しを増やすことにもつながります。マーケティングという広い領域の中でも、自分のやりたい分野が見つけやすくなるかもしれません。ぜひ、勉強だけでなく、世の中に対するアンテナの感度を高くし、多くの刺激を受け、いろいろな経験を積んでみてください。

<編集部のDiscover>
若手のうちから大きな責任を背負い、やり遂げてきた八谷さんの苦労が垣間見えた取材でした。一方で、困難を乗り越えられたのは間違いなくチームがあったからだという感謝の思いも伝わってきました。
華やかな世界に見られがちなマーケティング職ですが、実はその裏には地道な努力の積み重ねがあり、それを忘れさせてくれるような大きなやりがいもある、奥が深い仕事だとあらためて感じました。


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