新規事業検討から子育ての悩み相談まで。自由闊達に学び合い教え合うソニーの社員たち
大学にたくさんのサークルがあるように、ソニーにも多くのコミュニティがあるらしい。そうは言っても、会社のコミュニティである以上業務に繋がっていないと許されないのだろうか。しかし、実際は、新規事業を考えるコミュニティもあれば、子どもの受験の相談をするコミュニティもある。“ギャルマインド”を学ぶ講演会も。今回はソニーの講演会やコミュニティの中心にもなっている「PORT」や「BRIDGE TERMINAL」について、運営、コミュニティの旗振り役、そして個人でも講演会を開催されている方にお話を聞きました。
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- 福馬 洋平
- ソニーグループ株式会社 R&Dセンター Tokyo Laboratory
- ソニー株式会社(現ソニーグループ株式会社)入社後、商品の設計に携わる。その後、デザイン部門へ挑戦。複数の業務経験を統合した新商品・サービスの提案や、ユーザーに対するコミュニケーションなどへの挑戦を重ねる中で「エンジニアリング×デザイン×コミュニケーション」をキーワードに業務や非業務を楽しむようになった。現在は研究開発業務に携わり、「PORT」や「BRIDGE TERMINAL」など社員向けコミュニティスペース運営や支援を行っている。
- 久藤 颯人
「PORT」「BRIDGE TERMINAL」はどんな場所?
PORT
多様なバックグラウンドを持ったソニーグループの社員が集い、つながり、互いに刺激を受けながら学び、持続的に成長する場。ソニー本社とみなとみらいにある。
BRIDGE TERMINAL
事業領域を横断する協働とイノベーションの創出を目的とするスペース。ソニーシティ大崎にある。
多様な社員が混ざる、フラットな学びの場
—「PORT」や「BRIDGE TERMINAL」では様々なコミュニティや講演会がありますが、制限はないのですか?
それぞれに適切な場を選ぶことでだいたい大丈夫ですね。例えば、学びや成長に繋がることは「PORT」で、新しいことへの起点となりそうなことは「BRIDGE TERMINAL」でなど。全体を見て、例えば全部のコミュニティが全部マニアックだとよくないですが、マニアックなものもあれば、汎用的なものもあるというように、全体として調和と多様性が取れていれば良いと考えています。その結果、多様なコミュニティが存在していますね。
コミュニティの具体例:
・ソニー中小企業診断士会
・中学受験を通して親が成長するコミュニティ
・Metaverse Lab
・マインドフルネス サロン
・ビックデータ ワークショップ
—多様なコミュニティがそれぞれセミナー等を行っていますが、コミュニティに所属していない社員も幅広く参加しているのですか?
幅広く参加いただいていますね。私は、あえて前回参加した人を狙った案内は特にしてないんです。毎回社内全体に1回だけ流す告知方法を取っています。もちろん熱心な人は高頻度で参加してくださいますが、たまたま朝メールを見て飛び入りで参加してくださる方も多くいます。知り合い、初めてお会いする人、若手社員はもちろん、マネジメントや、役員の人が参加してくださることもあります。さまざまな職位の人が混ざりあって聴講している姿を見て、いい会社だなあと思いました。
—幅広い人が幅広い学びに触れるって、すごく素敵ですね。
私自身、当初はあまり興味がなくても、やってみると、逆に普段より気づきがたくさんあったり、イベントのアレンジを通じて興味が芽生えることがすごく多いです。「やってみたら意外と楽しい」ことを私の知人は“積極的受け身”と表現しているのですが、積極的受け身を社員各々がやっていくことで、どんどん気づきや興味が広がっていくことが、これからの時代の学びにすごく有効だろうと考えています。
これまでにない組み合わせから、化学反応を起こす
—なぜ福馬さんは「PORT」や「BRIDGE TERMINAL」に携わるようになったのですか?
私は声をかけて頂いたら喜んで参加するタイプの人間です。「PORT」には事務局の知人から誘われて自ら参画しています。私は、理系で就職し、長年商品の設計に携わった後、デザイン関連業務を行う部門に異動しました。周りに美大卒が多くを占める環境になり、今までの自分の仕事の常識と全然違い、最初は思うように仕事を進められず苦しい時期もありました。しかし、しばらく経験すると新しい分野に飛び込んで新鮮な気持ちで学び直すのも楽しいと思うようになりました。その後「デザイン」と「エンジニアリング」を掛け合わせた試作や提案を研究開発の部門でやりながら、「新しい事を聞いて、知って、かけ合わせて、みんな楽しくなろう!」とどんどん広めています。
—「設計から、デザイン→学びの促進」は、あまりイメージがつかないキャリアです。
正直私も計画してキャリアを構築したわけではありません。私は学生時代に、どういう社会人になり、どういう30代40代を歩むかを、あまり真剣に考えてなかったとも思います。ただ、次に何をしようかとアンテナは張っていて、小さな声かけがあった時は、少し挑戦してみるということは多いです。キャリアを綿密に計画してその通りになる人もいて、すごいと思います。一方で、世の中の流れに乗って目の前のやりたい事をやっているうちに、それが思いもよらない成果になり、新しいキャリアに繋がることが一種の理想とも考えています。
順風満帆なソニーという訳ではなかった
—常にそうした学びがあり、挑戦を続けていける環境があるのはいいですね。
「すみません。実は業務中に隠れてこういうことに挑戦していました。その結果、面白いものができました!」という机の下活動も昔からよくあると聞きます。机の下活動を通じて新しいものが生まれていくこともあるのでしょう。
机の下活動も最近は特に「異なる文化や異なる知見を組み合わせて、新しいモノやコトをつくる」ことを模索するのが大事だと私は思います。そういった考えの下、「PORT」や「BRIDGE TERMINAL」、「チャレさぽ※」が生まれたのではないでしょうか。
※R&Dセンターのボトムアップ活動
ソニーがエキサイティングになると、社会がエキサイティングになる感覚
—今後はどのようなことを目指していますか?
期待をいい意味で裏切り続けていきたいですね。ソニーがよりエキサイティングになると、社会も、よりエキサイティングになるという感覚があります。
よりエキサイティングにするために「PORT」のような場を活用することで、社外からも興味を持っていただいたり、異なる事業領域・分野の人が自ら近づいてきてくれるメリットもあると思います。イノベーティブな活動の多くは、イノベーションそのもので生まれるもの以上に、仲間を呼び込む吸引力が発生すると私は思っています。仲間が増えることが触媒となって次の反応が起こるという連鎖がいいですね。
<編集部のDiscover>
社員が幅広く学び、刺激を受ける環境がうらやましく思いました。また、福馬さん自身のキャリア選択にも感銘を受けました。私自身も就職活動をしていますが、「今思い描いて面接官に話しているキャリアステップは本当に良いのだろうか。本当に自分が歩みたい人生なのだろうか。」と不安に考えることがあります。様々な出会いを楽しみつつ変化を続けている福馬さんの姿は、「自分がその時やりたいことに挑戦したらいい。」と背中を押されているような感覚がありました。変化のきっかけとなる出会いや、さまざまなキャリアを楽しめるソニーの環境がいいなとも思いました。