SONY

自分の好きの延長線上にある「夢」を追っていく、少しわがままでもそれがソニーで築く自分らしいキャリア。

Culture

Sony Startup Acceleration Program(以下、SSAP)は、ソニーグループが持つ起業のノウハウや環境を提供し、スタートアップの創出と事業運営を支援するプログラムです。そんなSSAPを支えるアクセラレーターの1人である杉上さんは、学生と企業のコラボレーションによるイノベーションを実現するために、2019年からZ世代向けの社会連携講座を立ち上げ運営しています。今回は、杉上さんが活動にかける想いやご自身が描く夢を語っていただきました。
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杉上 雄紀
ソニーグループ株式会社 事業開発プラットフォーム Startup Acceleration部門
2008年ソニー株式会社(現:ソニーグループ株式会社)入社。2014年に社内起業家として新規事業を立ち上げ、リーダーを務めたのち、2019年に大学と連携し、テクノロジー×ビジネス×デザインのスタートアップの発掘と協創を行う社会連携講座を開設。
鷲尾 美波

1回転んで立ち上がってまた歩く。その繰り返しが前進ということ。

—社会連携講座は大学生向けとのことですが、学生という対象にこだわった理由は何ですか。

私は、大学生にすごく可能性を感じています。時間が十分にあって、創造力がまだまだ伸びていく時期ですよね。社会経験が少し足りなくても、そこはチームメンバーやアクセラレーターが適宜補えばいい。大学生のうちに一回スタートアップのようなことをやり、思いっきり失敗して、反省を踏まえて、もう一回次のチャレンジをして、それでも失敗して悩む、くらいがちょうどいいなと。そうして社会に出て行く一歩前の段階で得た学びと作ったネットワークを持って、社会に出てより大きな規模で挑戦していくわけです。

—誰でも失敗はしたくないと思ってしまうものですが・・・

失敗の前には「挑戦」がまずあります。挑戦して失敗して再挑戦する、そのサイクルをいかに作れるか、つまり、意味のある挑戦に対して意味のある失敗をすることが大事だと思っています。例えば、スキーは1回転んだら転ぶのが怖くなくなると思うんですよね。最初に転んだ方がいいんです。転び方をまず覚えて、このくらいなら行けるだろう、という感覚を持って、また滑っていけばいい。スタートアップ界隈でも同じことがよく言われますが、たくさん挑戦し、たくさん失敗したものの中から本当にいいものが出てくるんですよね。いかに失敗を上手く安く速くするか。だから、何かをやりたいと思ってたくさん失敗しながら試行錯誤してきた学生と企業がマッチングして一緒にプロジェクトを進める、そうしたコラボレーションを実現したかったんです。

夢が縁を運ぶ。

—杉上さんはどのような学生時代を過ごしていたのでしょうか。

高校までの私は、勉強ばかりしていました。いわゆる進学校に入学し、高校時代は一番厳しい塾に通い必死に勉強して最難関大学に入る、という決められたレール一直線のような人間でした。高校時代はなんら大きな失敗もしてこなかったですし、将来に関しても何かの生みの親になれたらいいなと思っていただけでした。モノを作ったり考えたりすることは好きだったので、そういうことができそうな会社ということでソニーを選びました。入社してからは机の下活動(通常業務外で社員が自主的に研究・開発を行う活動)やコンテストにも取り組み、楽しく働いていました。ところがあるとき、気分が落ち込んでしまったのです。自分がいろいろ挑戦してみてもなかなか商品に結びつかない、そもそもなんで自分は会社に入ったんだろう、自分は何のために働いているんだろう、とやさぐれたんです。

—やさぐれた時期があったなんて意外です。どのように立ち直ったのでしょうか。

人事の方に相談メールをしました。その方が親身になってくださって、ホワイトボードに私の頭の中のモヤっとした悩みを全て書き出してくださったんです。そこで社内で活躍している方のお話も聞いて、今までできない理由ばかり考えていたけれど、どうやったらできるかということだけを考えてもう一回やってみよう、と吹っ切ることができました。そして自分のオフィスのフロアに帰るとき、ボトムアップアイデアコンテストのポスターにたまたま目が留まり、当時の課長に話したところ、やってみなよと言われて。

—背中を押されたのですね。

私は割とわがままに「こういうことがやりたい」と上長に相談するタイプですが、止められたことは一度もありません。むしろ、それはどうやったら実現できるだろうねという返事が普通に返ってきます。ソニーには志が高い人達がいっぱいいますし、やりたいことがある人に対するリスペクトがある会社だなと思いますね。

—そうして、新規事業の立ち上げ、そして社会連携講座の創設につながっていったのですね。

はい。私は「夢が縁を運ぶ」という言葉を大事にしています。スタートアップや社内ベンチャーで成功した方々のお話を聞くと、だいたいの人が8割方運だったと言います。それはどういう運だろうと考えた時に、いろいろな縁とつながれたかという運だと思いました。人との出会い、仲間との出会いを教えてくれる人との出会い。そしてどうしたら縁が辿れるかというと、自分がどういう夢を描いているか、それを周りの人に伝えていけるかだと思います。起点はやはり自分のパッションにあり、周りの人が関心を持ってくれて、この人と会ってみたら?と縁を運んできてくれます。

アイデアがぶつかり、新しく生まれ変わる。その化学反応が好き。

—夢を自分が思い描く通りに他人に伝えるのは難しくないですか。

確かに難しいでしょう。そもそも最初から明確な夢を持っている人は少ないですよね。だから最初はたどたどしくぼやけていても、自分がやりたいと思うことを繰り返し話します。そしてフィードバックをもらい、ブラッシュアップするということを繰り返し続けていくうちに、自分にとって本当に大事なものがわかってきます。私の場合、人生の岐路に立つタイミングで、「君みたいな人を、あと100人作るにはどうしたらいいんだ?」と所属していた研究室の教授にOB会で言われたことをふと思い出しました。私は自分でアイデアを考えるのと同じくらい、人のアイデアに触れるのが好きなので、学生たちがアイデアを考えて、ぶつかってくっついて全然違うものに変化する、そういう場をつくることができたら面白いと思いました。しまいにはその願望が夢に出るようになって(笑)、よっぽどやりたいんだなと。

—サポートする側である杉上さんと学生は、世代が違い価値観も異なると思います。学生とのコラボレーション特有のもどかしさを感じる瞬間はありますか。

実は「私がアイデアを出してはいけないのか」という点をずっと悩んでいました。学生の話し合いにおいて、自分は何をしていい立場なのだろうかと。でも考えてみたら、ジェネレーションギャップなどではなく、自分も多様性の一つだと思いました。私は私でしかなく、学生は学生でみんなそれぞれ違う人間で、守備範囲も発想の着眼点も違う人たちが集まっています。むしろギャップがあるほうがいいわけです。誰が最初にアイデアを考えたかは関係ない。最初にアイデアを出した誰かが他の人とそのアイデアを響かせ合って、別の人が加わってくる。私はその何人目であっても、その化学反応が起きる“Interactive Inspire(創造的思考)”の状況をつくればいいと、納得しました。

Interactive Inspire、つまり「多様性によるアイデアの化学反応」を表現するために、杉上さんが作成したgifアニメの1コマ

楽しい、好きという感覚を大切に。

—社会連携講座の最終的なゴールは何でしょうか。

多くの学生は自分の市場価値というものにすごく敏感になりがちです。でも、今やっているのは自分が本当に好きなことなのかと悩んだり、まずどう一歩を踏み出せばいいのかわからないと迷ったりもする人もいるはずです。この講座はそういう人にこそ参加してほしいと思っています。講座を通して楽しく熱中できたことによって、終わった後に元々思っていた展望とは違う人生を歩みたくなる、そういうLife Changing Experienceをたくさん起こしたい。そして、大学生と企業とのコラボレーションの結果、新しいものを探索している時は大学生のように軽く早く立ち回り、チャンスが見つかったら企業がリソースを費やして進めるという、コウモリのような二面性を持って状況に応じて変われるような仕組みを社会に作っていきたいです。

—杉上さん自身の今後のキャリアについて教えてください。

自分のキャリアプランについてあまり深く考えていなくて、実はあまり興味もありません(笑)。大事なのは、自分がこういうものが好きだということと、社会に対してどういう変化をもたらしたいかということです。そこさえわかっていれば、後はその都度その方向に向かって歩いていくことが結果的にキャリアになると思っています。

<編集部のDiscover>
「失敗はもう怖くない」と語る杉上さん。その背景には自分との対話を通して数々の葛藤を乗り越えてきた跡が見えました。それと同時に、好きを追求してきた杉上さんの言葉には、わくわくするような大胆さと、こういう人になるべきだとつい自らを追い込みがちな私たち大学生を解放してくれる優しさを感じました。杉上さんたちが創る社会連携講座が今後いくつの人生を変えていくのか、とても楽しみです。


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