【世界で活躍するソニー社員】週末はビジネススクールへ!? 海外で10年以上活躍するソニー社員が働きながらMBAに通うわけとは
ソニーグループは現在海外売上比率約70%※、グループ社員全体の約半分が海外拠点に在籍しています。日本からの海外赴任者の数も非常に多く、その数は業界トップクラスを誇ります。ソニーは、常に世界中の社員と繋がり、連携しながら『新しい感動体験の創出』に取り組んでいます。
新連載【世界で活躍するソニー社員】では「海外で働くこと」を、読者の方により身近に感じてもらうべく、実際に海外で働くソニー社員に取材し、その働き方や仕事への想いを紹介していきます。連載の初回は現在、Sony North Americaを拠点としてグローバルセールスマーケティングを担当している佐倉さんに取材をしました。
- 佐倉 徳彦
- Sony Electronics Inc. Consumer Business Group Imaging Solutions
舞台は世界。売れる仕組みを作りだすグローバルセールスマーケティングとは?
—佐倉さんはこれまでどのようなキャリアを歩んできたのですか?
私は2006年に新卒で入社以降、国内外でセールスマーケティングを担当しています。入社後、数年間は国内で営業を経験しました。その時、小売りの電気店を担当させて頂いたことがとても良い経験でした。右も左もわからない新入社員で、商売百戦錬磨のソニーショップを担当し、それは毎日が苦悩の連続でした。電気店社長との個別検討会議や突合せ(勘定項目、請求書確認)棚卸し(在庫管理)、お客様(エンドユーザー)への直接の訪問販売、クレーム対応など、ありとあらゆるお客様対応業務を体現させてもらいました。思えばそこで最初で初めて経営や商売に触れ、それ以来、商売の厳しさはもちろん、魅力にもどっぷりはまっているのかもしれません。その後入社5年目でSony Europeに初めて赴任し、9年目にはSony Chinaへ異動、そして現在は米国・サンディエゴにあるSony North Americaでグローバルセールスマーケティング担当をしています。
—入社5年目以降ずっと海外で活躍されているのですね。
そうですね。各異動先で尊敬できる上司や同僚に出会えた結果、セールスマーケティング担当としてここまでキャリアを積んでこれたと思っています。
—人との出会いはとても大切ですよね。ちなみに佐倉さんが担当されているセールスマーケティングとはどのようなお仕事なのですか?
一言で説明すると「売れる仕組み」を作り、お客様にとってもいいモノ、サービス、感動体験を届ける仕事です。そのために年間の売上利益の計画を立て、それを元に事業会社から「製品」を買い、それに値段と付加価値をつけて「商品、サービス」としてお届けし、対価を受け取るということをしています。
—「売れる仕組み」作りですか…
そうです。年間の売上利益の計画を達成するために、12カ月52週間かけて各担当者は試行錯誤を繰り返します。セールスマーケティング担当は、売上利益を達成することに強いこだわりを持っている人が多く、自分も目標達成のため、一商売人としてやれることはなんでもするという想いをもって仕事をしていますね。
—国内のマーケティング職とは、どのような役割の違いがありますか?
基本的な役割は国内、海外問わず同じです。どちらもさまざまなステークホルダーと協業しながら、その時、その商品にあった最良の「売れる仕組み」を考え、最終的にお客様にいいモノ、サービスを届けるという点に違いはありません。ただ海外でのマーケティング職の方が、必然的に高いポジションについたり、業務分担から裁量権が大きかったりします。同時により一気通貫で事業を俯瞰し、業務を行えるということはあるかもしれませんがあります。
赴任当初は尖った自分を探すことから始まった
—佐倉さんはこれまで欧州、中国、米国と合計10年以上海外で活躍されていますが、それを実現できた理由は何でしょうか?
振り返ってみると自分の強みを持つという事がとても大切であったと思います。海外は日本以上にジェネラリストよりエキスパートが評価される環境だと私は思います。そのため、マーケティング職は皆何かしらの専門領域を持っていることが多く、例えばビジネスプランニング能力に長けている人もいれば、コミュニケーション戦略が強い人、カスタマーリレーションシップが強くディーラーとの商談にめっぽう強い人などさまざまなエキスパートが在籍している環境です。
—なるほど。でも何故、佐倉さんも強みを持つ必要があったのですか?
一番の大きな理由は強みを持たないと現地化する(=現地で活躍する)ために必要な情報が制限されてしまうことが多々あり、取得できる情報量に圧倒的な差が出てきてしまうからです。自論ですが、いち早く現地化し成功するために大事なこととして、どれだけ多くの情報を取り込み、自身で消化し、仮説を立て、立証に向けて実行できるか、という能力があると思います。しかし、「あの人は強みがない、あの人に聞いても分からないだろう」と思われてしまうと途端に情報が入ってこなくなり、断片的な情報しか集まらなくなってしまいます。より多くの情報を取り入れるためには、自分を見失わないという事はとても大切なんですよね。
—いきなり自分の強みを持つというのは簡単ではなさそうですが…
そうですね。自分も初めて欧州に赴任した時は、事業の仕組みが全くわからない状態だったと思います。
—どのようにその状況を打破したのですか?
まず私は各同僚の強みを把握し自分がどのポジションだったら活躍できるかを徹底的に分析しました。その結果、当時、自分の専門領域にできる能力は、商品知識とお客様へのセールストークであると考えました。商談に行った際「お客様にどうわかりやすく商品の良さを伝えるか」を考え抜き、それを自分の武器にしました。
週末はボストンのビジネススクールへ
—佐倉さんは週末、ボストンのMBAに通われているそうですが、なぜ働きながらMBAに通おうと思ったのですか?
一番の理由は、実務だけでなく、学術的な側面からも経営・商売を学びたいと思ったからです。もともとソニーのグローバルセールスマーケティング職はお金がもらえるMBAと呼べるくらい実務を通して、事業に関するさまざまなことを学べる仕事なのですが、より体系的にビジネスを勉強したいと思い、ビジネススクール行きを決断しました。
—お金がもらえるMBAというのはどのようなことでしょうか?
海外の特にProduct Manager/ Business Managerは、経営に近いポジションで、損益計算書に責任を持ち幅広い裁量権が与えられる職種です。連続したあらゆる投資判断をさまざまなステークホルダーから迫られるという点で、経営者に近い立場となるため、MBAで学ぶノウハウをより実践的な立場で体得できる非常に重要かつ、戦略的なポジションだと思っています。
—なるほど。そのような中で、佐倉さんは実務だけでなく、学術的側面からもビジネスへの知識を深めようとしたのですね。
そうですね。私は自身の持続的な成長のためには、常にインプットとアウトプットの量はイコールの関係にするべきだ、と考えています。しかし、社会人は学生に比べて圧倒的にアウトプットの回数が多い一方、特に海外勤務をしているとインプットの機会はあまり多くはありません。ましてや組織の中で役職が上がると必然とアウトプットの機会や重要な判断を迫られる場面もさらに多くなるのではないでしょうか。アウトプットの経験を通して知識を身に着けることもできますが、積極的にインプットの機会を設けることでバランスを保ち、自身の成長に繋げられると思います。
—確かにインプットの量が増えないと、限られた知識の中からいいアウトプットを出すのは段々難しくなってきそうですね。
その通りなんですよ。だから私はMBAに通う以前から、勉強の機会をたくさん設けるように心がけていました。
—入学書類の準備は大変だったのではないですか?
書類の準備は結構大変でした。卒業生の先輩からアドバイスをもらったり、著名なソニー社員から推薦書を書いてもらったりと周囲のサポートが手厚かったので結果的には無事、志望校に合格することができました。
—仕事とMBAという二足のわらじはとても忙しいと思いますが、どのようにしてタイムマネジメントをしているのですか?
工夫しているポイントは2つあります。1つ目は、オン/オフの切り替えをうまくすることです。繁忙期は仕事やMBAに集中する一方、閑散期には2週間などのまとまったオフを取り、家族とゆっくり時間を過ごすようにしています。2つ目は、周囲に頼るということです。MBAに通い始める前までは。全て自分が仕事を進めなくてはという思いがあったのですが、他のメンバーに頼ってみたり、部下に裁量を持たせてみたりすることで、チーム全体の動きが活性化するということを経験しました。
将来は経営者となり、サステナブルな組織を作りたい
—最後に佐倉さんの将来の目標を教えてください。
私の最終的な目標は、社会やユーザー、周りの同僚にインパクトを与え続けられる経営者になり、サステナブルな組織を作ることです。事業の置かれている環境はもちろんのこと、ユーザーの体験を取り入れ、先を見通す力で事業を成長させながら、後任を育成していくことで、それを実現できると考えています。
ソニーには尊敬できる先輩がたくさんいるので、その方々に続いていけるように日々精進していきたいと思います。
編集後記
佐倉さんはこれまで日本、欧州、中国、米国と計4か国でセールスマーケティングの仕事をされてきましたが、今回の取材を通して、その仕事に対する真摯な姿勢に強い感銘を受けました。
特に素晴らしいと思った話が、中国赴任の経験です。中国への赴任が決まった当初、佐倉さんは一切中国語が話せなかったらしいのですが、現地の言語が話せなくては仕事ができないと考え、着任3か月でHSK5級を取得したそうです。その後も働きながら勉強を続け、最終的には中国語で対等に仕事ができるレベルに語学力を上げ、結果を残したそうです。佐倉さんは勉強が好きとおっしゃっていましたが、「アウトプット≒インプット」であることは持続的な成長のためには大切であると感じました。