未知の感覚を呼び覚ます
新しい体験の創出を目指す
Kazuki Nakamura
入社後、テレビやBDレコーダーのアプリのUI(ユーザーインターフェース)デザインを皮切りに、ソニーグループ横断のXRプロジェクト Project Lindberghやデザインリサーチプロジェクト DESIGN VISION 2023への参加など様々な経験を重ねてきた中村 香月。多様な領域において「体験をつくるデザイン」を考えてきた彼女に、自身のルーツ、これまでの仕事、この先の目標について聞きました。
学生時代に出会った、
体験をつくるデザインの面白さ
あなたのルーツは?
UI/UXデザイナーを志す起点は、大学で履修したインタラクションデザインという授業でした。マッチ箱を使い童話を表現するという課題で、私は鶴の恩返しを題材に、マッチ箱の引く動作を襖に見立て、箱を開けると機織りの音とともに鶴が現れるという作品を制作したのですが、その過程で人の行動と感覚をデザインする面白さに強く惹かれたことを覚えています。
さらに授業では“体験は細部のデザインから成る”という教えのもと、先生から「なぜこの形なのか、この色なのか」と厳しく指摘され、そこで培った「ユーザーにどう思わせたいのか、細部まで論理的に考える」思考力は今の仕事にも役立っています。
ソニーなら多様な領域の
UI/UXデザインに携われる
ソニーを選んだ理由は?
就職活動では元々ゲーム好きだったこともあり、当初ゲーム会社のデザイナーを目指していましたが、学校の企業説明会で偶然、クリエイティブセンターのUI/UXデザインのチームを知りました。話を聞くと、テレビやオーディオといったプロダクトはもとより、音楽、映画など多様な事業領域のデザインに携わっており、ここなら色々な経験ができるのではないかと志望しました。
入社後は、テレビやBDレコーダーの録画番組を見るアプリのUIデザインをはじめ、グループ会社の新規アプリのUI、技術開発関連プロジェクトのUX提案などを担当。その後、コミュニケーションデザインのチームへの異動を希望し、ロゴやWebサイトのデザインも手がけるなど、想定以上に幅広い経験を積ませてもらっています。
「Headphones Connect」における新機能実装までの流れ
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新機能の仕様をもとに画面レイアウトを検討しスケッチにする
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企画、設計と
スケッチを見ながら議論 -
デザイン審議でフィードバックをもらい、ブラッシュアップ
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設計へレイアウト指示と
パーツを納品 -
実装確認
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リリース
一つ一つの仕事を経験値に変えて、
デザイナーとして成長していきたい
印象に残る仕事は?
入社4年目に参加したソニーグループ横断のXRプロジェクト Project Lindberghです。XRによる次世代エンタテインメント創出を目的に、私はVRならではの没入感をもたらすライブのUX提案を行いました。例えば、VR空間での音楽ライブでは、アーティストを巨大にしたり、歌声や演奏音を視覚化したりするなど、リアルではできない体験を模索しました。さらに、ライブ後にファンが集まり、熱狂の余韻を語り合えるスペースやバーチャル体験のシェア方法など一連のUXを提案しました。私自身、元々VRゲームを楽しんでおり、そこで培った知見を生かしつつ、同時に深めることができました。
現在は、オーディオ領域のUI/UXデザインのチームに異動し、ヘッドホンやスピーカーのカスタマイズアプリやウォークマン®などに組み込まれているUIのデザインを担当しています。ウォークマンのフラッグシップモデル NW-WM1ZM2のUIを担当した時は、設計メンバーの熱意が高く、彼らの「ユーザーにオーセンティックな音楽体験を届けたい」という思いを最大限サポートしました。彼らとともに、UIだけでなく、公式販売サイトに掲載する製品画像に表示された再生画面にある音楽CDのジャケット写真までこだわり抜きました。
行き詰まったら、直感を信じる
仕事のモットーは?
考え尽くしたと思う先に、最良の答えがあると感じています。私は心配性のせいか、デザインする過程でユーザーや世の中の動向、さらには制作側の目線など色々なことを考えてしまい、アウトプットに対して本当にこれでいいのかと試行錯誤を繰り返し、一旦「この方向ではダメなのではないか」と行き詰まるんです。
それでも一度寝て起きると考え方がシンプルになり、自分の直感に従って短時間で新しいデザインをつくりあげると、それが一番好評だったということがよくあります。積み上げたものをリセットするのは勇気が入りますが、時に考えすぎてしまう自分にとって効果的な方法だと考えています。
デザインの未来を
自分たちで開拓していく場
職場の雰囲気は?
クリエイティブセンターが継続的に実施しているデザインリサーチプロジェクト「DESIGN VISION」は、非常に有益な活動だと思います。この活動は、デザイナー自らがリサーチやインタビューを行い、未来の方向性を提示するもので、私も2022年に初めて参加しました。
2022年度は「The Balancing Act〜共生バランスへのアクション」というテーマのもと、この先注目されるであろう世界中の様々な分野の識者を各メンバーが手分けしてインタビューするなか、私はVRやメタバース分野を担当。文化人類学の観点からVR空間を分析している研究者や、メタバースのコンテンツクリエイターにインタビューを行いました。彼らトップランナーの考えに触れ、貴重な学びを得ました。
ゲームという領域で、
新しい体験の創出に挑戦したい
この先の目標は?
入社以来、多様なプロジェクトに参加してきましたが、今後は学生時代から焦がれていたゲーム領域のUI/UXデザインに取り組みたいと考えています。前述の「DESIGN VISION」のインタビューで、ある識者の方が「人間の感覚は五感といわれるが、内部感覚を含めると40〜50ある」と仰っていました。私も、人の中に眠っている新たな感覚を呼び起こすような体験の創出に携わってみたい。その近道の手法がゲームだと考えています。自分が持つスキルを動員するだけでなく、技術者など他分野の方とも協業し、この難問に取り組んでみたいと思っています。