みんなの「想い」を受け止め
ドライブさせることが自分の役割
Yohei Nakajima
入社以来、テレビやレコーダーなどのUI(ユーザーインターフェース)デザインを手がけながら、
ミラノデザインウィークに出展したインスタレーションの開発も担当してきた中島 洋平。
AV機器というソニーの本流に身を置きながら、新領域のデザイン開発にも取り組む彼に、
これまでの自身の軌跡や、仕事に対するモットーなどを聞きました。
世界中の人が使うものを
デザインしたかった
ソニーを選んだ理由は?
以前は国内のオーディオメーカーに勤務していたのですが、海外に行ったときに「あなたの会社のオーディオを使っているよ」と言われることがあって、すごく嬉しかったんですよね。そこで、もっと世界中の人たちに使ってもらえる製品をデザインできる会社はどこだろうと考えたとき、ソニーしかないなと。さらに、ソニーは「これ売れるの?」と思うような挑戦的な製品を出していたことも魅力でしたね。
実は入社後、あるカメラの案件でエンジニアから「この製品のUIを考えてほしい」と見せられた試作機が見たこともない形のカメラで「あぁ、自分はソニーに入社したんだ。新しい仕事が始まったんだな」と実感し、内心ワクワクしていました。
固定観念を捨て、
時代に合わせて変化していきたい
これまで担当した仕事は?
入社後は、テレビやレコーダーなどホームプロダクトのUIデザインを主に担当してきました。これらは長い歴史があるカテゴリーですが、私は「前までこうだったから、こうする」とは考えず、その都度「時代に合わせて新しいものをつくる」という意識でデザインに取り組んでいます。また、こうした業務の他にもクリエイティブセンターがミラノデザインウィーク2018に出展した「Hidden Senses」プロジェクトにも参加しました。日常生活の中にテクノロジーを溶け込ませるという新たな体験の創出を目指し、インタラクションを手探りで開発したのですが、多くの来場客が楽しんでくれて、自分のデザインが世界に通用した手応えを感じました。
巨匠の作品に
インタラクションを加える
思い出に残る仕事は?
イタリア・ミラノで行われたアッキレ・カスティリオーニ生誕100周年の記念回顧展「A Castiglioni monographic exhibition」にクリエイティブセンターが参加した際、一つのコーナーのデザインとインタラクションの実装を担当しました。普段はUIのビジュアルをつくるのがメインの業務ですが、ソニーでは各自が持っているスキルに応じてこういった仕事が舞い込んでくることもあります。
このプロジェクトで目指したのは、カスティリオーニ氏の作品の背景にある物語を読み解き、テクノロジーを使って体験をデザインし、それらの物語を伝えること。氏の作品にセンサーを仕込んでインスタレーションを制作するのはとても緊張しましたが、オープニングイベントでカスティリオーニ氏の親族の方々が楽しんでいる姿を見てホッとしました。クリエティブセンターの中にはさまざまな分野に長けた人がいて、例えばプログラミングのことで困ったらすぐ横にいるデザインエンジニアに聞けたり、造作のことはプロダクトデザイナーに相談できたりするので、展示の仕事自体はほぼ未経験でしたが安心して参加することができました。
開発者の想いに、
自分の想いを掛け合わせること
仕事に対するモットーは?
UIデザインは、ユーザーファーストで考えることは当然ですが、ソニーに入社してから、私は開発者たちの想いをいかに形にするかも同じように大切にするようになりました。製品を生み出そうとする開発者は「この製品で世界中のユーザーの暮らしを豊かにしたい」と本気で思っていて、彼らにも本当に納得してもらえるデザインをつくりたいと思っているんです。
だからこそ、日々の業務では開発者の想いを深く理解して、いろいろな方向性を考え尽くし、自分なりの発見やアイデアをのせたUIデザインを提案するようにしています。そんな情熱が伝播することで、メンバー全員の「つくりたい」という気持ちがさらに強固になり、ユーザーに響く製品に生まれると思っています。
チャレンジする人が
尊重される環境です
職場の印象は?
ソニーは、新しいことにチャレンジする人が尊重され、そのアイデアの実現をみんなで支えていくという、ものづくりが好きな人にはたまらない環境だと思いますね。私自身も、参加するプロジェクトに対して、デザイナーの目線で「この部分が面白いのでは」と再発見することを心がけていますし、そこに自分なりのアイデアを加えることで、世の中に対してさらに良い提案になると本当にうれしくなります。
また、私はいまアートディレクターとして後輩デザイナーを見る立場でもあるのですが、後輩たちの足りない部分を指摘するよりも、面白い部分をいかに伸ばすかを考えるように心がけています。
GUIデザインの仕事の流れ
(テレビのGUI)
-
次期モデルの
フィーチャー(新しい機能)
の
インプットを受ける -
画面フロー案の
インプットを受ける -
よりユーザビリティを高め、
かつ魅力的な
デザインの
方向性を考える -
エンジニアと
インタラクションの
詳細をディスカッションし、
また考える -
ユーザビリティ検証/
デザインFIX
(社内外の
被験者に実際に
使ってもらって) -
リリース
大切なのは、自分の「好き」の
軸を持つこと
読者にメッセージを
デザイナーを志す皆さんにひとつアドバイスするなら、「自分は何が好きなのか」軸を持ってほしいと思います。なぜなら、自分の「好き」という軸がぼんやりしていると、仕事を進めていくなかで、いろいろな人の意見に流され、「どこかのだれかはこういうのが好きかもね」と人まかせのものづくりに陥ってしまうことがあるんです。ただ自分の好きなものって意外にわからないし、私自身もブレることがあります。そこで日頃から、身の回りに好きなものを集めてみるなど、自分の嗜好を引いて見るようにしています。ぜひ皆さんもご自身の「好き」の軸はどこにあるのか考えてみてください。