見る人の心を一瞬でつかむ
ビジュアルをつくっていきたい
Chiya Watanabe
入社以来、AV機器全般のコミュニケーションデザインを担当し、
現在は、オーディオ機器カテゴリーのキービジュアルやプロモーションムービーを
ディレクションする渡辺 智也。時代の空気を感じながら、ソニー製品のイメージを
つくり続けてきた彼女に、ソニーを選んだ理由、担当した仕事、将来の夢について聞きました。
遊びのなかで、
クリエイティブの
空気を吸っていた
学生時代の思い出は?
大学では、コミュニケーションデザイン学科に在籍し、写真の面白さに魅了されていました。休みになると、建築学科やプロダクトデザイン学科の仲間たちと近場に出かけては、展示を鑑賞したり、有名建築を見学したりしていたのですが、私は展示や建築物はそこそこに、みんなが真剣に見ている様子や、友だちのいろいろな表情を撮るのが好きでしたね。
また、学生時代の強烈な思い出は、ある著名な漫画家の原画整理というアルバイト。誰もが知っているような名作漫画の原画を一枚一枚クリーニングして整理するという仕事だったのですが、「これ本当に手描きなの?」という思うくらい大胆かつ緻密な画力で圧倒されました。思えば、あれが人生初のトップクリエイターとの遭遇だったかもしれません。本当に刺激的でした。
理由などなくて、
単純にカッコよかったから
ソニーを選んだ理由は?
ソニーという会社を知ったのは、中学生の頃。親と家電店にオーディオ製品を買いに行って「どれがいい?」と聞かれたときに、私が選んだのがソニー製品だったんです。理由は単純で、どれもデザインがカッコよかったから。そんな原体験もあって、ソニーのデザイン部門を志望しました。
その入社試験がまた印象的でした。いきなり個性的な髪型のデザイナーがアドバイザーとして現れ、みんなの作品を見ながら「せっかくなので、ちょっとアドバイスしていい?」と、私が考えていたものとは全く違う角度からコメントしてくれたんです。それを聞いて自分が「ずいぶん狭い幅でデザインしていたな」とはっとして、視野がすごく広がったのを覚えています。
見る人の心を
一瞬でつかむのが仕事
これまで担当した仕事は?
入社してからは、AV機器全般のコミュニケーションデザインを担当し、最近はオーディオ製品のキービジュアルやプロモーションムービーなどのディレクションをしています。常に目指しているのは、見る人の心を一瞬でつかむようなビジュアル。そのために、担当製品のユーザー層を徹底的にリサーチし、目指すべきイメージが決まったら、写真に写るものすべてにこだわります。
例えば、パワフルなサウンドを楽しめるX-Seriesスピーカーのビジュアル制作では、モデルの髪型や服装、一点一点のインテリア、敷いてあるラグに至るまで細かくコントロールしています。また、モデルのフィッテングには忙しくても立ち会うようにしています。ファッションはビジュアルのクオリティを大きく左右しますから。
時代の空気を読み、
自分のセンスを信じること
仕事に対するモットーは?
コミュニケーションデザインで必要なのは、ビジュアルをつくり込む力とともに、時代の空気感を読み取る力だと思います。前述のX-Seriesのビジュアルも、当初は従来機種の路線を踏襲した「大人数のパーティーシーンで」という依頼だったのですが、私たちは「いまの若者には響かないのではないか」と。
そこから「コロナ禍で世の中が激変し、音楽シーンもEDM(※)から移り変わりつつあるいま、若者はどんな気分なのだろう」と他のデザイナーと話し合い、新たな方向性のビジュアルを提案しました。ユーザーに響かなければ、元も子もありませんからね。自分のセンスを鍛えるために、日頃から幅広いジャンルの雑誌や各世代のインフルエンサーの動向に注目しています。
いつものやり方を壊したい
思い出に残る仕事は?
最近の仕事でいうと、Mobile ES™ Seriesという北米向け車載オーディオのリブランディングです。従来であればフルカラーのビジュアルやプロモーションムービーを制作するのが定石ですが、リブランディングに賭ける開発メンバーの強い思いを引き受け、思い切ってすべてのビジュアルをモノクロにし、ソニーが昔から大事にしてきた黄色いMobile ESのロゴだけが目に飛び込んでくるような世界観を提案しました。
プロジェクトメンバーに見せたら「これだ!」と大好評で、プロダクトのキーカラーからUIの画面の色、パッケージ、展示台に至るまで、この世界観を貫くことができました。いつものやり方にとらわれず、常に新しいチャレンジを心がけています。
Mobile ES リブランディング
プロジェクトの流れ
-
市場調査 /
過去の調査 -
商品企画や設計と
ワークショップ -
ブランドのコンセプト立案 /
ラフスケッチ /
プレゼンテーション(2回) -
撮影立ち合い
(動画 / 静止画) -
修正指示出し /
チェック -
商品発表 / 発売
仕事も、プライベートも、
充実させていきたい
育児と仕事の両立について
小学校1年生の息子がいるのですが、いまは在宅勤務が基本になって、いっそう育児と仕事を両立しやすくなりました。これまでの通勤時間をデザイン作業にあてたり、仕事の隙間時間で家事をこなしたり、時間を有効活用できています。
また、クリエイティブセンターは、チームメンバーで互いに助け合う土壌があって、安心して子育てできる環境だと実感しています。在宅勤務で、自分が働いている姿を子どもに見せられることはとても良いことだと思いますし、この先も、仕事に力を入れながらも、プライベートをさらに充実させていきたいです。
ソニーの「カッコよさ」を
伝えていきたい
この先、挑戦したいことは?
若者たちにソニーの「カッコよさ」を伝えていきたいと思っています。いまソニーのコミュニケーションデザイン領域は、事業ビジョンの策定やブランディングなどコンサルティング的な案件が年々増加し、私自身も多く手がけていますが、いちデザイナーとしては、直感的にカッコいいと思ってもらえるようなビジュアル表現にこだわっていきたい。中学生の頃に自分が感じたソニーの「カッコよさ」を、今度は私が若者たちに伝えていく番だと思っています。